長澤夫妻の告白

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「すいません、忙しい時間なのに」  いつもの見慣れた店内に入ったところで、 カウンターの上に並べてある食材や洗ったばかりらしい食器の山を 見た信彦が、少し肩を落として侘びた。 「いえ大丈夫ですよ。全然問題ないです。  それよりもお二人の深刻そうな顔の方が気になっちゃいます。  何かあったんじゃないですか?開店前だってわかっていても  俺に何か話したくて来てくれたんでしょう?  遠慮なくしゃべってくださいよ」  尚樹はテーブル席を二人に勧めた。 開店準備をしながらではなく、面と向かって話を聞きたいと思ったからだ。  尚樹を前にして、まずは照美が口を開いた。 「昨夜なんですが・・」  昨夜、というワードに尚樹の背筋がピクリと痙攣した。 「昨夜、お客さんが引けた後に一人の男性がやってきたと思うんですが」 「ええ、いらっしゃいました」  平静を装っているつもりの尚樹だったが、 鼓動が早くなっていくのを抑えることはできなかった。  昨夜の男のこともそうだが、なぜその事を照美が知っているのか、 それ自体が尚樹の心臓に刺激を与えているのだ。 「その男性、ちょっと理解しがたい事を言っていたんじゃないですか?」
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