第1章:動き出した時間

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「ダメよ……そんなことされたら、変な気持ちになっちゃう。涼介くん、そういうこと考える人って嫌いでしょ?」 「っ……嫌いじゃないですよ。オレにだって、そういう気持ちはありますよ」 「んっ、んぅっ……!?」  先輩の不意を突くように、先輩の顔を無理矢理こちらに向かせて、キスをする。先輩の体が一瞬強張っていたが、すぐにキスを受け入れてくれた。  先輩の吐息が次第に妖艶さを増していき、お互いの呼吸が荒くなっていく。どちらかが唇を離そうとすると、どちらかが逃さまいと無理矢理唇を押し付けるようにキスを続けていく。  そして、オレはそのまま先輩のことをソファーに押し倒してしまった。 「っ、先輩……良いんですか?」 「涼介くんが良いなら……私の体なんて、別に見ても良いことなんか」 「っ……!」 「んっ、んぁっ!?」  恥ずかしそうに頬を赤らめていた先輩の顔を見ていると、次第に自分の中で何かが弾けていた。先輩があまりにも自分のことを卑下するものだから、気が付いたときには、オレは先輩の胸の膨らみに両手をかけてしまっていた。  先輩の柔らかな感触が両手に伝わってきて、そのあまりにも表現し難い柔らかさに、どんどんと自分が自分でなくなっていくような錯覚に陥ってしまう。片手では収まり切らない大きさだった先輩の胸に当てていた両手に力を込めると、双丘がゆっくりと形を変形させていく。パジャマとブラジャー越しにでも、その豊満な感触が手に取るように伝わってきた。 「んっ、涼介くん、それっ……!?」 「ご、ごめんなさい。痛かったですか?」 「ううん、大丈夫よ。涼介くんの手、大きくて優しい感じがするわ……もっと好きにして良いのよ? 私のこと、もっと涼介くんだけの物にして?」 「っ、先輩……そんなこと言われたら、我慢出来なくなりますよ……!? オレ、先輩のこと、もっと大事にしたいんです! もっと、こう……あのときの自分じゃなくて! ちゃんと真奈美先輩のこと、守りたくて!」  それはまるで、過去の自分が懺悔しているようだった。いつもはそこまで感情的にぬることはなかったのに、今だけは込み上げてくる感情を抑えることが出来なかった。  今目の前にいる人は、1度自分が傷つけてしまった人だ。2度同じことをしたら、それはもう到底許されることではない。だからこそ、今度はちゃんと先輩と向き合って、自分の気持ちを先輩にぶつけないといけなかった。
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