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「そういや、今度の飲み会の話なんだけどさ! お前も来るだろ? ほら、リハビリのやつらと一緒に飲もうってやつだよ!」
「ああ……そんなことを言われたような気もするな」
「その言い方だと、すっかり忘れていたみたいだな? 頼むよ! お前が来るかどうかで、リハの女の子たちの出席率が変わるんだよっ!」
「そんなこと言われてもな……大体、同じ職場で付き合い出しても、あまりロクなことは無いと思うけどな」
「それはそれ、これはこれだ! 今日までが出席の締め切りだから、お前も出席にしておくぞ! その日、別に当直が入ってるわけじゃないだろ?」
仕事中にも関わらず、隣にいた高橋はスマートフォンを取り出し、誰かと連絡を取っているようだった。上司に見つかったら怒られても不思議ではない状況であるが、幸いにも周りに他のスタッフはおらず、全員がレントゲンやMRIなどの持ち場に分散していた。
仕事に対してのやる気は置いておいて、高橋は人生を楽しく生きているという感じのやつだった。いつも生活の中に楽しさを求めているようで、特に職場での飲み会や合コンという話には目がなかった。今回の飲み会もこいつが企画したところもあり、いつにも増して生き生きとしているような気がしていた。その熱意を少しでも仕事に向ければ良いのではないかと思うが、それは無理な話のようだった。
当然のことながら特定の彼女がいるわけでもなく、仮にいたとしてもすぐに別れていたというのが今までの流れだった。彼女がいないということについては、オレも高橋のことは言えないのであるが。
「お前もそろそろ彼女を作ったら良いんじゃないか? お前くらいのイケメンさがあれば、大抵の女の子は堕ちると思うんだけどな。24にもなって彼女の1人や2人もいないとか、寂しくならないのか?」
「オレはお前とは違って、別に1人でも寂しくて死んだりはしないんだよ。むしろ1人の時間の方が大事なくらいだ」
「oh……神よ、この哀れな子羊にどうかご慈悲を……」
憐れむような視線をオレに向けながら、高橋はCTの撮影ボタンを押していく。
オレにだって彼女がいた時期もあったが、それを言うと更に面倒なことになりそうなので、止めておいた。
「そういえば、今年からリハに入った女の子が可愛いって噂になってるぜ! 俺たちとそんなにとします変わらないらしいから、チャンスだな!」
「情報が早いな本当に……」
1人で勝手に舞い上がっている同期を尻目に、オレは小さくため息をついた。
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