第3章:訳アリのカップルたち

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 瀬川先生との約束の日を迎えた週末。オレは病院からほどない距離にあるスーパーの前にいた。瀬川先生から指定された待ち合わせ場所がここだったのだ。  待つこと数分すると、瀬川先生がゆっくりとした足取りでこちらに歩いて来る。隣には見慣れない男の姿があり、オレは首を傾げた。 「やあ、待たせて悪かったな。こっちは、薬剤部の右京圭くんだ。今日はよろしく頼むよ」 「は、初めまして。薬剤師の右京と言います。どうぞ、よろしくお願いします」 「あっ、あぁ……えっと、放射線科の南野涼介です。初めまして」 「よし。全員揃ったから、買い出しして向かうとするか」  瀬川先生に引き連れられるようにして、オレと右京さんは一緒にスーパーの中へと入っていく。  薬剤部とは普段からあまり交流は無かったため、右京さんという名前は聞いたことがなかった。それに、右京さんはどことなく控えめな印象があったため、例え薬剤部と交流があったとしても、飲み会の場に来る性格とは考えづらかった。そんな右京さんも、瀬川先生の意図が分かっていなかったようで、終始首を傾げていた。  そんなオレたちの考えをスルーするように、瀬川先生は酒やお菓子をカゴの中に次々と放り込んでいく。その量は、とても数人で消費するような量ではなかった。 「あの、瀬川先生? これってどういうことですか?」 「ああ。説明が後になってしまったのは謝るよ。とりあえず、適当にカゴに入れてもらって構わないよ。月野さんや吉田さんの方は、結衣が上手くやってくれてるはずだ」 「先輩が? 桐ヶ谷さんと?」 「月野さんもって、まさか瀬川先生!?」  未だに状況が理解出来ていなかったオレに対して、何となく右京さんは瀬川先生の意図を汲み取ったようだった。  そして、右京さんはご機嫌そうに買い物カートを押している瀬川先生を尻目に、オレに声を掛けてきた。 「あの、南野さん……吉田さんという人は、南野さんと付き合っている人ですか?」 「えっ? あっ、そっ、そうですけど……月野さんって人は?」 「……月野さんは、僕が付き合っている人です。栄養科の」 「えっ……えぇっ!?」  そこでようやく、オレは瀬川先生がやろうとしていることを理解した。まさか、こんな大胆なことをするとは思ってもいなかったので、オレは瀬川先生に大きな声で問い掛けた。 「オレたちが3人で買い物をしていても、別に怪しまれないだろ? 病院なネットワークがいかに優秀でも、男3人が一緒にいたところで噂にはならないさ」 「いや、そうじゃくてですよ! これから向かう先って、どこなんですか!?」 「心配するな。あそこはオレたちの秘密基地だよ」  買い物カゴにビールやワインを放り込みながら、瀬川先生はニヤリと白い歯を輝かせていた。
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