プロローグ:8年ぶりの再会

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「すみません、先輩。高橋はいつもあんな感じなんで……悪気はないみたいなんですけど」 「ふふ、大丈夫よ。涼介くんとは違ったタイプの人みたいだけれど、仲良いのね」 「まあ、一応同期入社の仲というやつです。いつもあんな感じでふざけてるので、そこが困ったところですけど」  今まで何度か助けてもらったことはあったと思われるが、どうにもオレからすれば逆のパターンが多かったのではないかと思う。  オレが高橋の愚痴を話している間、先輩は何も言わずに黙ってずっと話を聞いてくれていた。 「でも、そんな高橋くんだからこそ、みんなこうして集まっているのね。人望がなければ、幹事としてここまで人を集めることは出来ないもの」 「確かに……そこが唯一といって良いほどの、あいつの長所かもしれません」 「涼介くんがそこまで言うってことは、よほど彼のことを信頼しているのね。昔もそうだったけれど、涼介くんは誰かの陰口を言ったりするような人ではなかったから。そんな涼介くんが高橋くんのことをそう言うってことは、よほど仲良いということだと思うわ。今日、涼介くんと再会出来たのも、もしかすると彼のおかげかもしれないものね」 「……それについては、悔しいけど同意します」  こんなことを本人に言えば間違いなく調子に乗ると思われるので絶対に言わないが、今回ばかりは飲み会を企画した高橋に少しだけ感謝する必要があった。  もしそうでなければ、先輩と院内で再会出来るのは大分先の話だったのかもしれない。放射線技師と理学療法士は、院内ではほとんど接点はなかったからだ。 「今日は飲み会だから大勢の人が来ているけれど……今度時間があったら、涼介くんとゆっくりお酒でも飲みたいな。あ、もちろん涼介くんが嫌じゃなかったらだけど。涼介くん、付き合っている彼女とかいるんだろうなって思ってはいたから」 「はは、オレにそんな人はいませんよ。付き合ったのは、先輩が最後です。先輩からそんな声をかけてもらえるなんて、嬉しいですよ」  先輩からの提案に、オレはすぐに首を縦に振った。  高校時代は苦い思い出しか残らなかったが、今となっては良い昔話として先輩と話すことが出来るだろう。オレとしても先輩とはゆっくり2人で話したいと思っていたし、先輩からの申し出は素直に嬉しかった。 「じゃあ、今度ゆっくり2人で飲みましょう? 涼介くんと久しぶりに会えて、本当に嬉しかった」 「それはオレもですよ。最初はびっくりしましたけど、先輩とまた会えて嬉しかったです」  お互いの連絡先を交換した後、再び高橋をはじめとした幹事軍団の襲撃に遭い、オレと先輩はそれ以降話せる機会を絶たれてしまった。  普段はそんなに酒を飲まない自分だったけれど、どうしてか今日はいつもより多くのビールを飲んでしまっていた。
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