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第一章:自由への旅路
「どうだ、僕は賢いだろ、回復魔法が使えるんだから」
精一杯強がろうとして口から出した言葉を耳にして、僕は恥辱感と屈辱感に嗚咽した。
僕は人々に与えた苦痛は知っていた。
僕は人々に与えた屈辱は知っていた。
僕は人々の羨望を知っていた。
僕は人々の欲望を知っていた。
僕は人々の嫉妬心を知っていた。
僕は人々の報復の手段を知っていた。
だが僕は、身を護る手段を考えなかった。
僕は馬車で移動する生活に慣れきっていた。
僕は馬車に護られる生活に慣れきっていた。
僕は衛兵に護られる生活に慣れきっていた。
僕はカネに護られる生活に慣れきっていた。
僕は父の後ろ盾に護られる生活に慣れきっていた。
僕は護られる生活に慣れきってしまっていた。
街なかで襲われたはずなのに、人々は通報しなかった。
嘲笑の声は聞こえた。
街なかで襲われたはずなのに、人々は助けようとしなかった。
侮蔑の眼差しは浴びた。
剥ぎとられた服を着なおした。
公衆の面前に、恥部を晒した実感がした。
家柄を脱ぎ捨てた自分を省みた。
なにも持ち合わせない、無力な弱者だった。
家柄を捨てたはずだった。
父親譲りの回復魔法に救われた。
嗚咽は慟哭へと変わった。
外の世界に夢を見た。
現実の非情を突きつけられた。
刺激を求めて飛び出した。
恥辱感と屈辱感を求めてはいなかった。
己が持つ力を知りたかった。
己の無力なんて知りたくなかった。
出戻ることを考えた。
どの面をさげて向き合えばいいかわからなかった。
この街で生きる術を考えた。
殺される確率が高過ぎた。
街の外で生きる苦労を考えた。
浴びてる視線の恥辱が勝った。
生きれるか自分に問いてみた。
屈辱感に答えきれなかった。
命を落とせば失うものを考えた。
僕はすべてを失っていた。
「もう死んでもともとだ、だが死ぬまえに、生きてやる」
僕は街の外で生きることを決意した。
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