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地下へ降り立ったルシファスは、ここ数年で最も不快な気分を味わうことになった。
孤児院の地下は牢になっていた。いくつもの柵で区分けされたそれは、まるで囚人監獄のミニチュアのようだ。これさいわいなのは、中にはまだ誰もおらず、使用された形跡もない点だった。
地上の孤児院内の静けさも相まって、ルシファス卿の仮説は確信に変わった。
ここにはそもそも、子供たちなどいない。いても、おそらくどこか一緒に集められているのだろう。
この孤児院がそっくりそのまま、ルシファスとノリスをおびき寄せるための罠だったのだ。
「よろしくないな。まったくもってよろしくない」
ルシファス卿はノリスに手振りをした。腕が脱臼した痛みでこめかみが汗まみれになっているヴェルダンは、背中を壁に押し付けられた。
「私の腹心が人買いとして雇ったからには、亜流ではなく一流だと思っていたが、どうもおまえは虫けららしい。ノリス、虫けらが間違って死なないようによく見ておきたまえ」
ルシファスは自分の口先が醜悪に吊り上がるのを感じた。
「さて。紳士たるもの自己紹介をしておくべきだろうが、不要だな。ご推察通り、私はそこにいるノリスの従僕ではなく、ノリスの言う〝私の主人〟だ」
「……ご丁寧に、どうも」
「しかしこれはどういうことだろうかな? 二点おまえには是非とも訊きたいことがある。ひとつ、私の注文は身寄りのない少年たちを集めてくることであって、空の孤児院を営めとは言っていない。しかも? 目録そのものがあるということは、人材斡旋屋として本当に孤児たちは見繕ってきたのだろう。それなのに、職務を放棄してこの私を罠にかけるようなことをした。私を殺しおおせた後、子供たちをどうするつもりだったのだ?」
卿はノリスの手からナイフを抜き取り、手の中で弄んだ。
「ここは拷問にはおあつらえ向きと見えるな。そこかしこに蝋燭があるではないか。暴力そのものは品性に欠けるが、効果的な暴力は時に知性以上の即効性を発揮する。……それで、申しひらきは?」
「へへっ……」ヴェルダンは下品に笑った。「どうせあんたらの目的のものはせいぜい一人か二人だろ。それ以外のガキを使っておれが何を企もうが勝手だぜ」
ルシファスはしゃがみこみ、なんの前触れもなく、手に持ったナイフをヴェルダンの右脚のすねに突き立てた。
絶叫が轟いた。
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