罪深き所業

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 ルシファスはヴェルダンに案内を受けながら廊下を歩いた。先ほど通ったばかりの、密やかな声すらも聞こえぬ静まりきった廊下を通り抜ける。ヴェルダンは屋敷の奥まった場所にある扉の前に立つと、腰から鍵を取り出し、鍵穴に回して扉を開けた。先には階段がぽっかりと暗い地下へ伸びている。 (汚らしいとは言ったものの……)  ルシファスは警戒心とともに、ヴェルダンの後をついて階段を降りた。 「それで、子供たちはこの下にいるのですか?」 「ここにはいない」  男の声は鋭く、冷たい。 「はて。ではここへは何用で参ったのです?」  次の言葉を紡ぐ前に、ヴェルダンが予告なく、唐突に振り返った。  ルシファスはとっさに浜辺での旗取り遊びを思い浮かべた。ヴェルダンが振り返りざま一瞬のスタートを切り、背面へダッシュする。真正面からまっすぐ自分に迫る。男の両手には光るものが見える。  ナイフだ。 「死ねぇ! ダネイィッ!」  ルシファスは体をひねった。最小限の動きで刃先のみを避ける。一撃必殺をせんと全体重を注いでいたヴェルダンはつんのめった。階段の上で大の男のもんどりうつ音がする。ナイフが転がる。だがヴェルダンはすぐに立ち上がろうとした。 「がッ!」  叶わなかった。刺客は立ち上がる前に何者かに顔面を蹴られた。  ノリスだった。腹心は瞬時にヴェルダンを無力化し、両腕を背中で拘束し、顔面を壁に叩きつける。鮮やかなノリスの手業にルシファスは口笛を吹いた。 「ば、馬鹿なッ!」  頬の肉を壁に思い切り押さえつけられ、唇の端から血を流しながら、ヴェルダンが切羽詰まった声をあげる。 「部屋に閉じ込めたはず!」
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