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侯爵夫人が呼んだ屈強な使用人たちの手によって、クラウス・ルヴィはお引き取りいただいたようだった。後に残ったのは、先ほどまで氏にエスコートを受け、今はぽつりと途方に暮れている淑女一人だけである。
レディはルシファスの姿に気づいて、助けてくれとばかりに視線を送った。ルシファスはとびきり上品な笑みを浮かべながら淑女に近づいた。
「あの人、とんでもない悪党だったのですね」
「まったくです、あの男は知性にも品性にも欠ける。それで、あなたの保護者はどちらに?」
未婚の女性がイベントへ参加する時には、決まってお目付役の保護者がついている。淑女はその時初めて、自分をサロンに連れて来てくれた保護者が四方どこを見回してもいないことに気づき、顔が青ざめた。ルシファスは失笑した。
「これは、まんまとあの男に保護者から引き剥がされたと見えますな。どれ、彼などよりももっと素晴らしい男性を紹介して差し上げましょう……ああ! あの紳士は知り合いですが、なかなか。彼に送ってもらうとよろしい」
「紹介してくださいますか?」
「もちろん、あなたがお望みなら」
レディの差し出した手をルシファスは掴み、早速男性と引き合わせた。顔の作りからしてもお似合いだし、何よりこの独身紳士には早く妻を作ってもらわなければならなかった。
この男の脇が甘くなれば、計画中の犯罪が滞りなく完遂されるからだ。
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