恋のはじまり

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   昨夜を彷彿とさせるような口づけ。  震える両手で良太の胸元に触れ、その口づけに脳髄まで快感に侵される好さに身を浸そうとした途端重ね合わせた唇を離されてしまった響は、その離れる感触にも好さを覚えてしまったのか、欲情を滲ませたため息を零した。 (…ほんと、子供だよ)  口づけの先を無意識にねだりながらも良太を見ようとしない潤んだ響を見下ろしながら、良太は人の悪い笑顔をその顔に浮かべる。 「こんなことをするのはお前だけだって分かってるくせに。…な…?」  機嫌を直せ、と言って肩を軽く叩く良太に、しがみつきたくなる。  自分だけを見てほしいという独占欲が、好きというその一言にしがみつく響を衝動的に突き動かそうとする。  けれど――…  溺愛している響の気持ちを知りながら、光に対する未練を隠そうともしない思いごと良太を好きになったんだから、そんなことできない…と、知ったかぶった大人のような言葉を独りごちた響は、自分の気持ちに素直になることができず、良太に甘えたいと思う本心に蓋をしてしまう。 「──…」  一番近くにいる自分が何より良太を理解しているのだから我慢するのが正しいのだと思い、そして、今目の前で甘言を口にする良太の言うと通りだと、直面する現実を都合良く受け止め己れを誤魔化した響は、華奢すぎる自分の肩に乗せられた青年の大きな手を、ただ見つめることしか  できなかった…… .
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