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好きにすれば、と、内心でぼやきながらも、響は少年の後をついて歩き出す。
「立花」
クラスメートは相も変わらず馴れ馴れしく響に呼び掛け、振り返る。
クラスの誰もが響のことを呼び捨てにする傾向にあるので、響は気にもせず目で話の先を促した。
「立花ってさ、部活にキョーミないわけ?」
(そういうのに燃えるヤツの気持ちが分かんないだけ)
自分の周囲にいる人が何かに熱中して白熱してくると、それに反比例するかのように響の心は熱くなることを忘れるように下がって行く。
スポーツに熱狂できる人間が理解できない。 だから、理解しようとも思わない。
そんな自分が混じることでせっかくヒートアップした熱が冷め、その結果、熱することなく冷めた自分のせいで迷惑をかけてしまうのだと分かっているから、わざと彼らと距離を取り、近づかないようにしているのだ。
だからこの手の話題を振らると、上手くその問いをかわすことができずにいつも辟易してしまう。
どう答えるのが正解なのかが分からない響が仕方なくいつものように誤魔化し笑いを覗かせた後、良太に教えてもらったセリフを口にした。
「興味がない訳じゃないけど、何かやりたいっていう気持ちが湧かないから」
じっと響を見ている少年に向かって、苦し紛れとも思われかねない言葉を口にすると、クラスメートである少年は何の反応も示さず響から視線を逸らすと、先を急ぐことに集中したようだ。
「なら、しゃーねーか」
何となく残念そうな声色でそう言った少年の態度が響のツボを突いたらしい。
「何、部活の勧誘?」
と、吹出し笑いを零した後、からかい目的で歌うようにそんな言葉を口にした。
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