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「ちゃんと拭けよ。 昨日プール洗ったばっかだから水は奇麗だけど、ほっとけばカゼひくかもしんねーからな」
周りに寄る人たちに受け応えする彼に目を奪われ、思わずじっと見つめていた響は、唐突に声をかけられた上に笑顔を向けられ、戸惑いから思わず赤面する。
そんな響を見て、彼は一瞬はっ! として息を飲む。
(え、何?)
響の隣にいた少年が見つめ合う二人を見て目蓋をしばたかせていると、突然彼が戸惑う響の手首を掴み、強引に自分の腕の中へと引き寄せた。
「!?」
いきなり抱き寄せられたことに驚いて、彼の腕の中で顔を上げると、いたずらをする前の子供のような笑みを零し、怯える響の耳に囁いた。
「乳首、透けて見えてる」
「…ッ!」
抱き寄せられた腕の中で胸に当てていたタオルを外して見ると、確かに乳首の色がばっちり分かるほど、乳輪がワイシャツ越しに透けて見えていた。
響の傍にいて、彼の囁きが聞こえてしまった少年は首まで赤くなったが、響はむっとした表情を見せただけで、動揺する素振りも見せなかった。
(ありゃ?)
響の動揺した反応を楽しみにしていた彼の思惑が外れて、不機嫌そうな顔をしている響をぽかんとした目をして見つめる。
思惑が外れた彼の気が抜けたせいで、逞しい腕に込められていた力が緩み、その腕の中から解放された響は、パチパチと瞬きを繰り返している彼の胸元にタオルを押し付けた。
「おっ?」
「あんただって、見えてるよ」
響が学校で装っている「自分」の口調でそう言うと、彼は響の手からタオルを受け取り、自身を見下ろした。
見れば、響より水しぶきをまともに浴びたせいでずぶ濡れになっていた彼は、半透明になったワイシャツ越しに立派な腹筋までくっきりはっきり透けて見えているではないか。
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