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(なんか…ヤラしいんだよ、この人のカラダ)
思わず素で照れてしまった響が赤くなりかけていると、彼は大きな口をニッ! と歪めて笑い、
「オレのは!」
と吠えて、手にしたタオルを金網の上に放り投げた。
「見せるためにあるからいーんだよ。 でも、キミのはそーじゃないだろ?」
誰もが目を奪われてしまうような流れる動きでワイシャツを脱いだ彼は、照れ隠しで膨れっ面をしている響を見て笑いながらそう言った。
今度こそらしくもなく赤面してしまった響の前で、彼は脱いだワイシャツを豪快に絞り、肩にかけた。
「…っ!」
(わ、悪かったなっ、どーせ貧弱だよ!)
彼の体に見惚れてしまった自分を認めたくなくて、彼に向かって悪態をつきそうになりながらも何とか理性でそんな自分を押し止め、彼を睨みつけながらもぺこりと頭を下げて背を向けた。
一緒にいたクラスメートが二人のやり取りを見て赤面したまま固まっているのをほったらかしにして、さっさと目的地へと歩き出す。
「わッ、ちょっと待てよ、立花!」
少年も慌てて彼にタオルを返し、スタスタと怒った気持ちを現すかのように歩いて行く響の後を追う。
「タイジくぅ~ん、なに男子にまでセクハラはたらいてんのよォ」
「可愛いカンジの子、ソートー切れてたよね」
プールサイドにいた水泳部の女子たちが、遠ざかって行く二人の背中を見ながら口々に囃し立てる。
「や~、笑かすつもりだったんだけどなー」
水を含んで額にかかった髪をかき上げながら、太司はそうぼやいた。
(でも、怒った時の釣り上がった目元がセクシーだったよなぁ)
響に睨まれた時の残像を思い出しながら、太司はやらしい顔つきをしてニヤリと笑う。
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