84人が本棚に入れています
本棚に追加
それほど良太という存在は、響の中のヒエラルキーの頂点に君臨しているという訳で…
(うわ…いつ見てもマッチョ)
どんなに嫌でも、直接光に会わなくてはならなかった響は、光と二人きりで向き合う勇気を絞り出すことはできずに、光が勤めているスイミングクラブに足を運んだ。
会員制のスイミングクラブの受け付けで入場許可証をもらい、覗いたそのプールサイドでA4サイズのボードを持ち、胸に青い笛をぶら下げた、頭とボディーがちぐはぐに見える兄の姿を見つけて、響はげんなりとした表情をしてため息をはく。
顔を見れば確かに響と兄弟だと分かる『優男』系なのに、その体の方は『脱ぐとすごいんデス』を地で行くマッチョ(しかも日焼けしてテカテカに光ったボディーでポージングをするマッチョではなく、米軍系の白いボディを持ったマッスルタイプなのだ)で、誰もが一瞬引いてしまうような『オニイちゃん』へと光は変貌を遂げていたのだった。
「…へ…?」
そんな兄の傍に、良太からの頼まれ事があるからと言って近づきたくない、しかも言下にできない確執を抱いている相手でもある光を目の前にして、平常心でいられる自信がない、と、ここまで来ても躊躇っていると、そんな響の視界にどこかで見かけたことのある姿が飛び込んできた。
…この間見かけた時の茶髪は、後頭部の襟首辺りで結ばれている。
しかし白いワイシャツからのぞく隆起した上腕二頭筋には見覚えがある上、日焼けしている肌色は傍にいる光とは対照的で――…
(って! なんであのお騒がせ先輩がここにいんだよッ!)
.
最初のコメントを投稿しよう!