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「どうしたー? 珍しいなぁ、兄ちゃんに会いに来てくれたのか~?」
「ち、ちがッ…!」
本当は光に会いに来たはずなのに、思わず反射的に「違う」と言って身を返した響は、光の太い二の腕から何とか逃れようとする。
しかしマッチョ兄・光の腕から非力な響が逃れられるはずもなく――抱き上げられた腕の中でジタバタともがく響と光のやり取りをただ呆然と見ているしかなかった太司は、じゃれ合う二人の顔を交互に見比べながら指を彷徨わせ、
「ホントの、兄弟?」
と言って、ぽかんと口を開いた。
「こんなにそっくりな兄弟もいないだろー?」
「ンなわけねーだろッ、離せッ、降ろせ~!!」
気色ワリーんだよ、この白マッチョ…と叫び散らしたくなる衝動を堪えてもがいていると、床から数センチほどしか離れていなかった爪先が難無く地面を捉え、以外にあっさりと光の腕から解放された。
人目のあるこんな場所で暴れるつもりなど毛頭なかったのだが、それでももう一度あの肉肉した光の腕に捕まるつもりのない響は素早い動きで光から離れると、太司の後ろに線の細い体を隠した。
「いや…つーか、血の繋がりなんか、ミジンも感じねーんだけど?」
現在の光しか知らない者なら当然と言えば当然なセリフを太司が口にすると、眉を八の字に下げた光が不満顔で
「失礼だな~」
と、苦言を口にする。
「ここまで良く似た兄弟を捕まえて、何を言うかなぁ!」
(どこがだよ)
その場にいた誰もが一斉に内心で入れたツッコミなどどこ吹く風、言葉もなく脱力する響に向かって
「ね~?」
と相槌を求めた光は、首から下げたホイッスルに手をかけると、改めて太司に向き直った。
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