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だのに、だ。
良太以外には興味がない響は、強烈な一言を口にする。
「オレ、賑やかな人って嫌いなんだよね。 つーか、あんたみたいなのはそれ以上にウザくてイヤ」
「うわっ、顔に似合わね~ドクゼツ!」
(!)
響の言葉に思わず太司が本音を口にすると、響も
(なんでオレ、この人にタメ口きいてんだ?)
と一瞬我に返り、急に恥ずかしさを感じて耳を赤くする。
太司と結んでいた視線をふいっと逸らした響は、
「と、とにかく、そういうことなんで…もう話しかけないでクダサイ…」
と言って、組んでいた腕を解いた。
そのまま逃げるように太司の前からいなくなろうとすると、早足で歩く響の後を物言わぬ太司がついて歩く。
スイミングクラブの外に出てからも、数分たった後も背後に太司の気配を感じた響は、ショウウインドウ越しに太司の様子を伺う。
…太司は何気なく歩いているようだ。 特別、響の後をつけている様子はない。
意識しすぎかなぁ、と、何かと悪目立ちする太司のせいで過剰な反応をしてしまっている気がした響は、深呼吸するようにため息をついて、いつもの帰り道を辿り始める。
―――昔、響はしょっちゅう『変な人』に付け回されて、一人では下校できなかった過去がある。
何も下校中に限ったことではなかったが、小学校の校門の影に隠れて響が校内から出てくるのを待っていた中年の男が、似つかわしくない雰囲気を醸し出していたのに不信感を抱いた生徒に通報され、警察の御用になったことが響の中に強く印象づいていた。
(…そういう人とも違う感じだし、気にすることないか)
そういう『何かしでかしそうな人』というのは、雰囲気からして普通にしている人とは違うことを経験したことで知っている響は、肩に入っていた力を抜いてゆっくりと歩く。
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