恋のはじまり

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   一人にしてはおけないからこそ、両親は元より兄の光も真剣に響を気遣ってくれる。  響には煙たがられてばかりいる光だが、だからこそ両親に信頼されている光の友人・良太の所に「泊まる」と、事実そのままを話してしまってもなんら問題はない話だった。  しかしこうしょっちゅう「信頼できる兄の友人」の家に転がり込むというのは、響と良太の関係を知らない光にも疑念を抱かれかねないことだろう。  でも、両親をしっかり安心させる理由がなくてはならないし、響を大事に思ってくれている光を黙らせるためにも口裏は必要なのだが…  このままでは良太との関係性を問われるのも、時間の問題のように思われた。 「…構うもんか、知られたって」  自分たちが何をしているかということを知られる後ろめたさより、今の幸せを勝ち取ったという気持ちが強い響は強気の呟きを漏らし、電話をする良太の声から遠ざかるように枕に顔を埋め、俯せに寝る。  ――…良太とこういう『関係』になって、もう三年が過ぎようとしている。  物心がつく前から良太を好きだったし、思うように会えない日々の繰り返しでも、響は良太を溺愛していた。  決してそれが――馴れ合いを許さない、片想いの恋でしかないと…分かっていても。  響一人だけがいつも良太に振り回され、苦しくて、苦い思いばかりする。  端から見れば語るに落ちる、と誰かに指摘されそうな恋だが、そんなことははじめから分かっていたことだ。  一生片想いのままでいなければならない覚悟をしてまでも良太を求めたのは、…求めずにはいられないほど、良太に溺れていたからだ。  目を無くし、耳を失うほど夢中で良太を求めて追い縋る響の欲求に――良太は難無く、応えてくれた。 .
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