2・コンビニの麗人

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2・コンビニの麗人

 あたしの好きな作家は花水木星々(はなみずきほしぼし)先生という。  クローゼットに隠していた本も全て花水木先生の作品だ。というか、私は先生以外のTL作品を読んだことはない。  この三年間のあたしの空虚な心を慰め埋めてくれていたのが先生の作品たちだった。  その中でも桜庭ももかちゃんが主人公の『花は秀麗な幼なじみによって激愛される』シリーズがあたしの一番のお気に入りで。  ざっくりいうとドジで貧乏で間抜けなももかと、ツンデレでお金持ちで、でも実は暗い過去に苦しむ幼なじみとのエッチでスリリングな恋愛&アクションものだ。  ももかちゃんを激愛しつつ事情があっていつも一緒にいられない幼馴染の代わりに、各話、思わず涎が垂れそうなイケメンたちが主人公のももかのハートを狙ってあの手この手で迫ってくるところも見せ場の一つで、毎回ドキドキハラハラさせられる。 ……そして、そのドキドキハラハラがあたしの胸の中に燻る苦しみを忘れさせてくれる。 そう思わせてくれるのは花水木先生の作品だけなのだ……理由なんてわからないけど。  *  あの日。父と母が亡くなった知らせを受けたクリスマスイブ。届いた彼からの手紙は、彼の結婚式の招待状だった。  両親の死と彼から突きつけられた別れの二つに、私はすっかりパニックになった。  私の頭の中は(嘘でしょ)と(どうして!)の羅列が渦を巻き渋滞していた……耳の穴や目からその文字が飛び出してくるんじゃないかってくらい。  葬儀の打ち合わせを業者とするときもすっかり上の空。お葬式で喪主として挨拶なんて当然できるわけなくて、津雪が立派にあたしの代わりをやってくれた。
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