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葬式が終わるなりあたしは、白い封筒に書かれていた住所を訪ねてみた。
ホントは喪が明けた以上、会社に出勤しなきゃいけなかったんだけど、それどころの気分じゃないあたしは無断欠勤して行ったんだ。
そこまでするくらい必死でそして勘違いしたままだった……いや、あたしは彼に訴えたかったのだ。
あたしの真心を。
こんなにあなたのことが好きなのよ、って。
あたしはずーっと待っていたんだ。
あなたから迎えにきてくれるのを。
何年も、何年も。
信じて。
待っていたの。
だから何が何でもその住所にいかなければならなかった。
彼の結婚が、タチの悪いいたずらだと確かめるために。
——あぁ、悪いひと。よりによって両親が死んだ日にあたしの愛情を試すような手紙を送ってくるなんて。
そうまでしてあたしが心変わりしていないか試そうとしたの?
……、徒歩と電車で辿り着いたのは真新しいおしゃれなマンションの前だった。
「う、そ……」
あたしは手にした封筒の裏を見て絶句した。
封筒に書かれていた住所は番地までで、マンションの名前も部屋番号も書かれていない。
本当にこの招待状を、結婚式の出欠席の返信をして欲しいなら、こんな中途半端な住所の表記の仕方ってない。
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