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というか、今の今まで気がつかなかったけれど、出欠の意思を書く返信のハガキは送風されていなかった……。
つまり、あたしのところにきたこの手紙は、一方通行の、あたしを切り捨てるための〈お知らせ〉なんだ。
ようやくそこに思い至ったあたしは、唇を噛んでしばらく外でマンションに出入りする人たちを見ながら立ち尽くした。
今になって考えれば、一人ただただ思い込みで彼と〈付き合っている〉と信じていたあたしな訳だけど、その時は〈裏切られた〉としか考えられなかった。
——会いたい。
とにかく彼に会って、彼の口から、彼の本当の言葉を聞きたい。
そして、全部嘘だと言って欲しかった。
あぁ、そのためにはこの中に入らなければ。
このマンションのどこか、彼のいる部屋へ。
しばらく人の出入りを観察しているうちに、マンションに入るには入り口にあるパネルを操作して住人に解錠してもらわないとマンション内に入れないようになっていることがわかった。
あたしはその時になってようやく、彼の〈拒絶〉をひしひしと感じ始めていた。
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