2・コンビニの麗人

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 爪は艶やかなミントグリーンで中指と人差し指、親指にシルバーリングが光っている。 (いやん、今日もステキ♡)  そう、毎朝ウォーキング途中夜このコンビニでこの美しいご尊顔を拝することこそが、私のモチベーションなのだ。  最初、ダイエットするって宣言した時には、三日坊主、いや一日坊主で終わると津雪に言われたし、蒼くんからも「無理はしないでくださいね?」って何度も言われた。  あたしだって本心ではすぐに嫌になってやめちゃうと思ってたんだ。  そもそも外を出歩くこと自体が久しぶりすぎ。卵に手足がついたような今の自分の体型を一眼に晒すのかと思うと憂鬱で仕方なかったし。  それが挫折せずに続いているのは、一つ隣の席がお気に入りらしいこの人の存在のおかげ。  初めて出会ったのは、ウォーキング初日だった。 ものの五分歩いただけで(もうやだ。面倒くさい)と心が萎えかけていたあたしの前に突然現れた美しい人。  車道に車が来ないのを確認して道路を挟んで向こうにあるコンビニに入った彼に吸い寄せられて……、気づけばあたしも入店していた。
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