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あぁっ、でも……まず名前。名前なんていうのか知りたいヨォー……。
ほくほくと心に活力が湧いてくるのを感じながらあたしは勢いよく残りのコーヒーをぐびっと飲み干そうとして……。
「ふぎゃっ」
無様にコーヒーを吹いてしまった。
うぅ〜、汚ちゃない……。
目の前のカウンターに吹き飛んだ茶色の飛沫を綺麗に始末したいのに、慌てて探ったジャージのポケットの中にハンカチは無い。
だって出かけるとか今までなかったんだもん。
だから服のポケットにハンカチ入れるしゅうかんなんてあたしには無いんだもん。
大体、あたしがコーヒー吹いたのは誰かが後ろからドンってぶつかってきたからで!
「あっ、奇遇ですねー。三上先輩じゃ無いですかぁ」
朝にしてはテンション高めな黄色い声が隣から聞こえてきて、あたしはビクッと肩を揺らして茶色い滴を顎から垂らしながらそっちを見た。
女が立っていた。
あたしの視線から、麗しの君を隠すような彼女の絶妙な立ち位置に悪意を感じるのは、あたしのひがみ根性のせいだろうか?
「やだ、汚い」
綺麗に描かれた眉のカーブが嫌悪感も露わにあたしのことを蔑んでくる。
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