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食い気味なあたしが勢いのまま麗しの君の両手を掴もうとすると、なぜか割り込んできた蒼くんに手を取られた。
……チィッ。
(せっかく麗しの君と手と手を取り合うチャンスだったのに)あたしは思わず心の中で舌打ちしていた。
それにしても、さっきから蒼くんの距離感近くない?
気のせいかもだけど……。
「落ち着いてください湖雪さん。担ぎ上げて運んだのではなくて、コンビニにあった担架を借りてここまで運んだんです」
なんでもはじめは津雪と蒼くんの二人で運ぼうとしたんだけど、あたしを乗せた担架を二人だけでは持ち上がることができなくて、結局四人がかりでお神輿よろしく運んだらしい。
(……お恥ずかしい……)
「お姫様抱っこじゃなかったのね……」
つい素直にがっかりしたあたしを津雪が鼻でわらう。
「バカ姉貴。思考がお花畑すぎっつぅの」
「津雪は早く仕事行きなさいよっ」
ギャーギャー喚きながら津雪のことをドアの外に押し出していると、マンションの通路の向こう側から女の人がこちらに近づいてくるのが目に入った。
「……せんせーぇ。セイ先生—」
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