2人が本棚に入れています
本棚に追加
手で両耳を塞いだ蒼くんがぶっきらぼうに聞く。
蒼くんは麗しの君のことが気に食わないみたいだ、とこの時になってあたしは気づいた。
もしかして必要以上にあたしにくっついてきたのは見せつけようとしていた?
うーん、まさかね。
「ここはひとつ貸にしましょうか」
ニコッと笑った彼があたしの手を握り唇を寄せる。
そして蒼くんの見ている前でチュッて。
「……っ!」
はぎゃっ!? 手の甲にチューされちゃったよぉ!
まさかのお姫様扱いに頭が真っ白になっているあたしの横で真っ青になった蒼くんがドスっと壁を殴った。
なんだろ? 蒼くんが機嫌悪いなんてそうそうないことなんだけど。
そんな蒼くんのことをうっちゃらかして、麗しの君が顔を近づけてくる。
うおぉぉ、芳しい息を嗅いでもいいのかしらん? 今あたし同じ空気吸ってますけど? 何か罪になったりとか、しないよねっ!?
「僕も出勤しなくちゃなんでもう行きますね。また会いましょうね。家も分かったんだし。伺いますから。あぁ、僕はね三上沙羅って言います。あなたは?」
「ほっ……ほり、堀……」
「苗字はさっき表札を見たから。下の名前を教えて?」
最初のコメントを投稿しよう!