3・嫌な男

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と、茶色い事務机の向こうで偉そうにふんぞりかえっているのはこのコンビニのオーナーだ。歳は……多分三十代。ちょっと背は低めだけどすらっとしていて顔も声もいい。多分イケメン……偉そうにさえしていなければ。 (その歳で……? やりたいこと? ……そんなの分かってりゃバイトじゃなくて正社員探すでしょーが。とにかく金、金が欲しいのよ。働いてるって事実が欲しいだけだから) あたしは目をぱちぱちさせた。 流石にこんな本心は言えない。だからあたしは愛想笑いを浮かべたまま、 「……」 なんも答えなかった。  敢えて言うなら、まず花水木先生のご尊顔を拝したい。そんな、直接話したいとかあわよくばお友達になりたいなんておこがましいことは言わないけど、この願望は是非とも叶えたい。花水木先生は性別を明かされてはいないが、想像するにきっと可憐な美人さんだろう。あたしなんかが先生のお目を汚してはいけないからできれば背後から見守らせていただきたい。でもいつかよければ、本当に先生がいいって言ってくれたら一緒にお茶とかできる仲になりたいなぁ〜なんて、ヒェ、ただの妄想ですぅー。  やっぱりこんなこと真面目な面接の場で言えない……。というか他人様にこんな欲望ダダ漏れにしたくない。そのくらいの分別は一応あるつもりだ。沈黙は金。そう、金だ。そして私は金が欲しい。それが最終回答です! ……という万感の思いを目力に込めて私はオーナーの顔を見つめた……。  結局面接の感触は絶望的だった。  面接をしたコンビニからは徒歩五分。あたしはその五分を下を向いたまま家まで歩いた。ずっと下を向いていたからよもやあたしの脂肪が地面にボトボト落ちてくれてないかなーと、途中一回だけ振り返った。けれどもちろんそんなことはなくてそのことにもあたしはガッカリした。  ドアを開けると心配顔の蒼くんが待ち構えていた。 「どうでした?」 「ウン」
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