4・昔の男

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「もうダメ! 今度こそ辞める。明日こそ辞めるって言う!」 と、叫んでみた。  あたしの叫びに応える人はいない。  いつもだったら、蒼くんが「湖雪さん、働いてまだ一週間も経ってないでしょ……」って言いながら梨でも切って持ってきてくれそうなものなんだけど……。  ふん、と鼻から息を吐き出したら「ブヒッ」とおかしな音が出た。 (豚じゃないっての!) と、心の中で憤慨して一向にへこまないお腹を撫でる。撫でながら、大きくて重たいため息が出た。  なんてことない。理想と現実の乖離に対する憤りと諦めだ。  腹が立つから、ドスンと乱暴に床に敷かれたラグの上に腰を落とす。ローテーブルに膝をついてコンビニ弁当のラップを剥がしていると、弁当の横に置いていたスマホが通知音を鳴らした。 トーク画面を開く。蒼くんからだった。 〈お仕事お疲れ様です。変わりないですか〉 ——大丈夫。今日も仕事は楽勝だったよ。  打ち込むとすぐに返信が来た。 〈親戚の用事が湖雪さんの始業と重なっちゃって、本当すみません。ちゃんと食べてますか?〉 ——家族でもない私のお世話より、親戚を優先するのは当然だよ。 〈明後日には帰れます。そしたら湖雪さんが好きなものたくさん作りますね!〉
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