プロローグ

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プロローグ

 最後に好きだった人は、自惚れさせてくれる(ひと)だった。 ——肌が白くてスベスベだね。 ——綺麗な髪をしているね。 ——素直で真面目なとことか、すごく好きだよ。  優しくって心地いい彼のそんなささやきがあたしの毎日の心の支えになっていた。  と言うのも、あたし堀影湖雪(ほりかげこゆき)はその当時も若干ぽちゃっとしてて、顔の作りは全体的に地味でいかにも日本人な胴長短足族な体型で。  ほら、コンプレックスの塊が歩いているような子だったから。  あたしって人はね、ちょっぴり背伸びして娘をお嬢様に仕立てたい両親の思惑で私立の女子校育ち。  小学校、中学校、高校の六・三・三、計十二年間。まさに男っ気ゼロの純粋培養。  一日のほとんどを過ごす学校生活で周りはもちろん女子一択。同世代の男の子と会話どころか視線をかわしたことすらない。  ガッコーの先生と目が合うなんてのはカウントに入れないで。先生は先生であって男じゃないもん。  だからまず大学に入って驚き心が挫けそうになったのは、自分の周りに男子が行き交う光景だった。  そして周りの女の子たちがみんな綺麗。
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