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Hungry Spider1
「ハトが飛ぶ、ツバメが回る、世はなべてこともなし」
赤茶けた岩山が聳える荒野にペンキの剥げたトレーラーハウスが一台止まっている。
車のすぐそばの立木にロープを張り渡し、鼻歌を口ずさみながら洗濯物を干しているのは三十代の女性。
身に纏うのは燦燦と降り注ぐ陽射しを照り返す純白のサマードレス。綺麗に澄んだソプラノが紡ぐのは、独自の抑揚を付けた古い八行詩。たおやかな動きに合わせ、緩くウェーブがかった金髪が揺れる。優雅に長い睫毛が縁取る瞳は天国の空を映し込んでいた。
若く美しい女だった。
凡百の男が思い描く、運命の女を具現化したような。
実際の所、彼女は若くはない。既に成人に近い年齢の二児の母だ。その証拠にサマードレスに包まれた豊満な胸元や、成熟した曲線美を描く腰の肉感が、経産婦特有の母性的な色香を匂い立たせている。
彼女が産み落とした子どもはどちらも私生児で、父親を知らずに育った。
心優しいハトと自由奔放なツバメ。息子たちは彼女の誇りだ。
今日は絶好の洗濯日和、乾いた青空がどこまでも広がるインディアンサマー。
気持ちいい風に身をさらし、風と遊ぶ髪を押さえる女の足元を、追いかけっこでもしてるみたいに大小の枯草のかたまりが駆け抜けていく。
「回転草が仲良く喧嘩してる」
眩げに目を細めて枯草の行方を追いかける。
知らず唇に浮かぶ微笑みは、都会で頑張っている息子たちを想い出したからか。
ずっと前にもこんなことがあった。
彼女はまだ少女だった。
娼館の休憩時間、町に流れ着いたジプシーの老婆に会いに行った。老婆は百発百中の占い師であり、将来元気な子を産めるか尋ねた少女に、「あんたの産む子は悪魔になるよ」と予言したのだ。
それを聞いたいずれ母となる少女は絶望した?
憤激した?
悲嘆した?
一生男と寝ることなく子など産まないと決心した?
正解は、有頂天だ。
少女は天涯孤独だった。
両親の顔は知らない。捨てられたのか死んだのか、どちらにせよ物心付いた頃にはいなかった。
客を取り始めたのは初潮が来る前。
「股がツルツルじゃなきゃ興奮しない変態が多いんだよ」と女主人は嗤い、生えてきたら剃るようにと当時まだ10歳の少女に剃刀を持たせた。
女主人のことはママと呼んでいたが、血の繋がりはない。
店の女の子は皆ママと呼ぶきまりだったのだ。
彼女の「ママ」はバードバベルの路地裏に腐るほどいる孤児の中から器量よしの娘だけを見繕い、一人前の娼婦に育て上げた。
自身も娼婦上がりであるが故に店の子にはあらゆる技巧を叩き込み、外見も手をかけて磨き上げたが、年々衰えてゆく自らの美貌と若い娘たちを引き比べ、理不尽なヒステリー発作をよく起こした。
当時、彼女は店の稼ぎ頭だった。商品価値が下がるといけないからと、背中を鞭打たれるだけですんだのは不幸中の幸いだ。
そんな境遇で育った少女が本当の家族を欲しがったとして、誰が責められようか?
自分を愛してくれるなら、お腹を痛めた我が子がいずれ世界を滅ぼす悪魔になろうと関係ない。
ロープに干したシーツの皺を伸ばす手を止め、青空に弧を描くツバメを見詰め、束の間の追憶に耽る。
彼女の故郷……バードバベルは一度滅んだ。ドラッグに狂った住民たちが殺し合ったのだ。
ところが根っからしぶとくずぶとい女主人は少数の娼婦を連れて辛うじて逃げ延び、バードバベルから少し離れた町に新しい店を構えた。
その時すでに彼女は身ごもっていた。
ばれたらどうなるかはわかっていたので、妊娠の事実はひた隠しにして客を取り続けた。
激しい悪阻に苦しみながら、だんだんと膨らむ腹を目立たぬようにワンピースに包みながら、客に激しく抱かれながらも胎児に聞かせる子守歌を唄い続けた。
以前逃亡に失敗した娘は足の腱を切られて監禁された。彼女は毎日食事を運んだものの、数か月と経たず衰弱して死んでしまった。
娘が息絶える間際に呼んだのは、必ず迎えに来ると約束しておきながら裏切った恋人の名前だった。
仲間の悲惨な最期を目の当たりにし、少女は学んだ。
身重の体で逃亡の危険は冒せない。失敗したらお腹の子の命も危ない。
大前提として、砂漠で破水したら誰を頼ればいいの?
辺境の町は孤立している。砂漠で行き倒れた旅人が獣に食い荒らされるのは日常茶飯事、追い剥ぎや砂嵐にも警戒しなければいけない。
ハゲタカが赤ん坊の目玉をほじくり、ハイエナが胎盤を貪る光景を想像し、初産の少女はうなされた。
いざ赤ん坊を産む覚悟をしても、物心付いた頃より娼館に隔離されて育った少女は、出産に関する正しい備えを知る手立てがない。
子どもの健康を考えるなら仕事を休んだ方がいいのはわかっていた。
しかし他に稼ぐ手段なんて知らない、誰にも教えてもらってない。ましてや金の亡者の女主人が許すはずもない。
少女にとって幸運だったのは、何人かの親切な客に恵まれた事。客の中には彼女の境遇に同情し、悪阻止めを持ってきてくれる医者がいた。妊婦を進んで抱きたがる変態もいた。腹の膨れた女にしか欲情しないのだそうだ。合意の上の行為なら口止めは容易い。
少女はお腹の子を守る為、男たちに抱かれ続けた。心の中で「ごめんね」と謝りながら、殆ど忘れかけた子守歌を唄いながら、それでも娼婦として働き続けた。
だってそれしか知らなかったから。
娼婦は天職だったから。
女主人が気付いた頃には堕胎できる時期を過ぎていた。
全て計画通り。少女は確信犯だった。女主人は仕方なく彼女に子を産む事を許す。
身も蓋もない話をするなら子持ちの娼婦自体珍しくはなかったし、少女の美貌と若さならお荷物が一匹増えても、お釣りがくる位稼げるだろうと踏んだのだ。子どもの器量が良ければ他の使い道もある。
少女は予定日より一か月早く破水した。娼館の客室のベッドの上で、そばには女主人と例の医者がいた。出産には十時間かかった。
処女膜が破けた時とは比べ物にならない激痛を乗り越えた明け方、漸く弱々しい産声が上がった。
赤ん坊は男の子だった。
あれから色んなことがあった。辛いことも苦しいことも、楽しいことも幸せなこともたくさん。
一人目の息子にはピジョンと名付けた。
ピジョンは殆ど夜泣きをしない大人しい子で、店の客や娼婦たちにも可愛がられた。母乳の出が悪い時は子持ちの娼婦や下働きに分けてもらい、すくすく育った。
そんな平穏な日々が続けば、彼女がピジョンを抱いて店を出ることはなかったかもしれない。
ピジョンが1歳になったある日、娼館が買収された。娼館を買収した男の名前はフェニクス……少女の昔馴染みだ。
フェニクスの素性はよく知らない。断言できるのは彼が少女を水揚げをしたこと。
女主人を追い落として娼館を手に入れたフェニクスは、赤ん坊を抱いた少女にこういったのだった。
「ガキは捨ててこい」
聞き間違いかと思った。
本気だった。
今も覚えている。瞼の裏に焼き付いて打ち消せない。
無造作に伸ばしたイエローゴールドの髪。世界中を敵に回すような険を帯びた切れ長の目には、一際鮮烈な赤い瞳が輝いていた。フェニクスは悪魔のように美しい男だった。
悪魔の邪視から赤ん坊を庇ってあとずさり、たった一言「できない」と絞り出した少女に対し、フェニクスは冷笑を浮かべて告げる。
「んじゃ殺せ。この店においてほしけりゃどっちかだ」
それから地獄が始まった。
あの頃の事はあんまり思い出したくない。フェニクスは自らが処女を散らした少女に激しく執着し、行動全てを束縛しようとした。
特に好んだのは赤ん坊がいる部屋で少女を犯すこと。
指をしゃぶりながら寝ているピジョンの隣で少女を組み敷き、股をこじ開けて突っ込むのは序の口。
ある時はピジョンに授乳中の少女を後ろから犯し、ある時はわざとピジョンの顔に精液をぶっかけて、それを少女になめとらせた。
しきりにくすぐったがり、しまいにはきゃっきゃっと笑い出す赤ん坊の顔を舌で浄めながら、少女は「ごめんねピジョン、ごめんね」と繰り返し泣き崩れた。
来る日も来る日も密室の凌辱は続く。フェニクスを恐れた娼婦たちは無視を貫き、客たちも黙秘に徹する。
当時のフェニクスは複数の娼館経営の傍ら新種のドラッグを売り捌き、莫大な利益を上げていたのだ。
されど少女は断じて赤ん坊を手放さず、怒り狂ったフェニクスの仕打ちはエスカレートしていく。
しまいには少女を娼館の一室に監禁し、薬を打って慰み者にした。
「あのガキは誰の種だ。例の神父か?まだ続いてやがったのか?バードバベルでくたばったと思ってたのに……」
「あっ、ぁあっ、ぁんっ、もっやめ、ヤあっ」
赤ん坊を人質にされては逆らえず、暗闇の中、毎日のように体をもてあそばれた。
片足は縄で柱に繋がれ、部屋と繋がったトイレより遠くへは行けず、フェニクスの気分次第でどこでも犯された。
「お前ができねえなら俺がやる。ガキを殺せ。首を折れ」
「しないしさせない」
「次が欲しけりゃ種付けしてやる。胎がぶっ壊れてなきゃいくらでも孕めんだろ」
フェニクスは鼻で嗤った。
「どうしても殺したくねえっていうなら、赤ん坊の孔が好きな変態に売り付けても」
顔面に唾を吐いた。
「あの子に指一本でも触れてごらんなさい。貧相なブツを噛みちぎってやる」
また犯された。暗闇でピジョンが泣いている。もうずっと泣いている。二人目の妊娠に気付いたのは、どうにかフェニクスの隙を突いて逃亡した後だ。
あれから十数年の歳月が流れた。
息子たちの巣立ちを見送った後、大人になった彼女は荒野にひとりで暮らしている。
母子三人で住んでいたトレーラーハウスはすっかり広くなった。広すぎて少々寂しく感じるほどだ。
「ふー……こんなもんかしらね」
額に滲んだ汗を拭い、ステップの中段に腰掛けて一休み。
以前は母親想いの上の息子が家事を手伝ってくれたが、今はなんでも一人でやらなきゃいけないので大変だ。ロープに干した洗濯物が一斉に翻り陽射しを弾く。
サマードレスの懐から几帳面に折り畳まれた便箋を出し、開く。
『親愛なる母さん、元気ですか?ピジョンです。俺たちは元気でやってます。スワローは元気すぎて困ってる。
母さんのもとを巣立って三年、賞金稼ぎの仕事もどうにかこうにか軌道に乗ってきた。同封したのはバンチの特集記事の切り抜き。よく撮れてるでしょ?スワローのヤツ、なんでカメラに中指立てるんだろ。ピースサインでいいじゃないかそこは。
アンデッドエンドは結構いい所だよ。面白い人がたくさんいて毎日飽きない。大家さんは親切にしてくれるし、キャサリンも幸せ太りしたみたい。レタスの芯とか食べてるんだろうな。
友達もできたんだ。
前に話したっけ、東洋系でチェーンモーカーの……母さんがこっちに来たら紹介するね。今にも肺癌で死にそうな顔色してるけどびっくりしないでね。
スイートやサシャたちとも遊んでるよ。二人ともキレイになった。こないだなんてキマイライーターの金婚式のお祝いに招かれたんだ、すごいだろ?めちゃくちゃ豪邸だった、なんとでっかいプール付き!
でね、パーティーに来てた女の子とダンスを踊ったんだ。
何回かトチっちゃったけど、教えてもらったらすぐコツを掴めた。スワローは楽勝。かなわないよなホント。
師匠……先生の事は話したっけ?
俺に狙撃を教えてくれた……今でも報酬の一部を寄付しに通ってるんだ。子どもたちも懐いてくれて嬉しい。みんな本当にいい子だよ。今年もスワローと一緒にイベントの手伝いに行ったんだ。アイツ見てくれだけはいいから、立ってるだけで客寄せツバメになるんだよね。
先生はすごく立派で尊敬できる人だから、母さんもきっと気に入るはず。
先生も会いたがってたよ。前に母さんのこと話したら「素敵な人ですね」って褒めてくれたんだ。
お世辞なんかじゃない、俺にはわかるんだ。
……これは母さんにだけ教えるけど、先生みたいな人が父さんだったらいいなって思ってる。
スワローには言わないでね、恥ずかしいから。
自炊はちゃんとしてるから安心して。
たまにピザも出前するけど……こっちに来てからちょっとだけ料理の腕が上がった気がする。スワローが風邪で寝込んだ時はミルク粥作ってやったんだ。
料理当番は交代制にしようって約束したのに、スワローのヤツちっとも守らないんだ。
昨日だってサボって押し付けるし、母さんもなんとか言ってやってよ。俺の小言にはまるで耳貸さないんだ。夜遊びも酷い。一昨日なんかアイツが連れ込んだ女の子と洗面所でばったり鉢合わせして
……愚痴っちゃってごめん。いい事だけ書こうとしたんだけどな。それもこれも全部スワローがトラブルメイカーなのが悪い、四六時中滅茶苦茶するから尻拭いが大変なんだ。
そうだ、仕送りは足りてる?足りない時は遠慮なく言ってね、都合するから。トレーラーハウスはまだ現役?ペンキの塗り直し費用とかエンジンの修理費とか大丈夫?雨漏りとかしてない?してたとして、バケツ足りてる?
あのさ。
スワローはまたブツクサ言うかもしれないけど、俺は母さんが来てくれても全然大丈夫だから。
母さんさえよければ、こっちで一緒に暮らさない?
アンデッドエンドはいい所だよ。人は親切だしおいしいものがたくさんある、母さんもきっと気に入る。そりゃ危険な事も少しはあるけど、俺とスワローがしっかり守るって約束する。
娼婦が母さんの天職なのは知ってる。母さんが誇りを持って選んだ仕事なら応援したい。
けど、やっぱり心配だ。母さんには体を壊さず長生きしてほしい。
娼婦が十年先二十年先も続けられる仕事じゃないって、ホントはわかってるんだろ?
俺たちの母さんがボロボロになるのは嫌だ。
母さんには十年先も二十年先も元気で幸せで笑っていてほしい。
俺は娼婦が天職の母さんが好きだけど、娼婦じゃなくなった母さんも大好きでい続けるよ。
母さんならきっと世界一可愛いおばあちゃんになる。
もし母さんが俺たちと暮らすのに抵抗感じるなら別に部屋をさがしてもいい。大丈夫、なんとかするよ。俺としちゃまたみんなで一緒に暮らせたら言うことないけど……
アンデッドエンド観光したいなら案内役は任せて、友達にも穴場を聞いとく。
こっちに来るなら歓迎する。待ってるよ。
あなたの息子 ピジョンより』
「あの子ってば……」
風にそよぐ便箋を握り締め、懐かしい筆跡をなぞって呟く。
大きくなっても母親離れできない息子に苦笑い、深呼吸して手紙を胸に押し付ける。
自分は良い母親じゃなかった。
息子たちには精一杯の愛情を注いできたが、客の相手をしている最中はほったらかしにし、馴染みにぶたれているのに気付かず辛い思いをさせてきたのも事実だ。
憎まれて当然。
疎まれて自業自得。
あの子たちにはそうする権利と資格があるのに、どうしてこんなに慕ってくれるの。
駄目なママを愛してくれるの。
ピジョンがお腹にいる時も仕方ないと自分に言い訳して客を取り続けた。
フェニクスに凌辱されている間中、まだ赤ん坊のピジョンをそばにおいていた。
スワローがお腹にいる時もフェニクスの再訪を拒めず、結果的にあの子の寿命を削ってしまった。
こんな罪深い母親が許されて良いはずなのに、どうして?
便箋に一滴雫が落ち、ピジョンの名前が薄く滲む。手の甲で顔を拭き、カサ付く手紙を抱き締める。
ピジョンとスワローに返事を書かなきゃいけない。
私のことは気にせず、自分たちの幸せだけ考えるように説かなきゃいけない。
あの子たちはもう自分の力で飛んでいけるんだから、きちんと手放さなくちゃいけないの。
嘗て女主人やフェニクスがしたように、閉じ込めて縛り付けるのが愛情だなんて間違ってる。
「ハトが飛ぶ、ツバメが回る、世はなべてこともなし」
震える指先で一行一行なぞりながら口ずさむのは、初恋の男の子に教えてもらった八行詩。本来の表現と違うのは息子たちになぞえらえた替え歌にしたから。
ピジョンとスワローさえ遠くで元気ならそれでいい。あの子たちの人生に私はいらない。
『よくお聞き。あんたの胎は地獄だよ』
ずっと家族が欲しかった。
夢は叶った。
だから
「あ」
突然の突風が彼女の手から便箋を吹き飛ばす。
風にさらわれた便箋を追い、空の彼方を振り仰ぐ女の背後に不吉な影がさす。
「久しぶりだなエンゼル」
回転草が猛烈な勢いで転がっていく。女の目が恐怖と驚愕に見開かれる。懐かしい男が立っていた。
くすんだイエローゴールドの髪を後ろに流し、赤く冴えた目に歪んだ愛情を湛え、微笑む。
「遅くなっちまったけど、迎えに来たよ」
「フェニクス……」
次の瞬間、女は逃げた。サマードレスの裾を翻してステップを駆け上がり、トレーラーハウスの中を走って運転席をめざす。
『よく聞いてエンゼル。君は逃げて、もっと広い世界に行くんだ』
鼓膜の裏側で懐かしい声が響く。
炎に包まれ燃え上がるバードバベルから、体を張って逃がしてくれた初恋の少年の……ピジョンの父親の声だ。
『きっと飛べる。どこへだって行ける。自分を縛るのはやめるんだ』
ピジョンの優しさはあの人譲りだ。
彼女の源氏名はエンゼルといった。本名は知らない。あったかもしれないが、忘れてしまった。
飛べもしないのにエンゼルだなんてとおかしがる小娘に翼をくれた、心優しい夜梟を思い出す。
間一髪ハンドルにしがみ付いてエンジンをふかす。後ろから髪を掴まれ引き剥がされた。力ずくで床に押し倒され、胸元からへそまでサマードレスを引き裂かれる。
「どきなさいよクソ野郎!」
エンゼルは死に物狂いに抵抗した。無駄だった。フェニクスは暴れる彼女を押さえ付け、大胆に零れ出た乳房を揉みしだき、痛みと恥辱に歪む顔を堪能する。
「十何年たって自由の身になれたとでも勘違いしたか?めでてえオツムは治ってねえなエンゼル、わざと泳がせてたんだよ!」
「どうしてそんな回りくどい、さっさと来ればいいでしょ!」
「追いかけっこが即打ち切りじゃ楽しめねェだろ、とことんびびらせなきゃ意味がねえ。お前の居場所は常におさえてた、全部俺の手のひらの上だった訳よ」
「なんで今頃?」
「息子に会った」
エンゼルの抵抗が止む。フェニクスが残忍な笑みを広げる。
「ストレイ・スワロー・バード……だよな?だっせえ稼ぎ名。アンデッドエンドで賞金稼ぎやってるなんて知らなかった、水くせえな」
「ヤング・スワロー・バードよ、っああ」
即座に訂正を求めるエンゼルの腰を引き上げ、淡い金の恥毛が生えた股をまさぐりだす。乾いた膣に指を出し入れされる痛みにエンゼルが呻く。
続いて衝撃が来た。フェニクスが無理矢理押し入ってきたのだ。
「あぐっ、いやっ、ぁあっ、抜いてよ、痛っあ」
「熟女になったお前もイケてるぜ、エンゼル。いっぱい食え」
「ずっとほっといたくせに何で今さら、ぁっあ」
「ガキが巣立って油断したか?自分は用済みだって?甘いな」
太く固くいきりたったペニスがエンゼルを犯す。
「デカくなったな、ここ」
「さわんないでっ、ぁぁっ」
裾の下に手をもぐらせ、クリトリスの包皮を剥く。一際敏感な突起を刺激され、エンゼルがメスの顔で仰け反る。
フェニクスはそれを見逃さず、クリトリスを重点的に愛撫し始めた。
「ぁ゛っ」
ぢゅうっと吸い転がし搾り立て、器用に舌を出し入れし、熟れて開いた陰唇に唾液を塗していく。
「で、娼婦は引退したのか?ご無沙汰だったみてえじゃん、中がすっかり干上がってる」
「ふあっ、ンんっ、あぐっ痛ッふぁ、やあっ、抜いてッやだ、やあああああっ」
「おっと、濡れて来たな。さすが娼婦が天職の女、強姦でも感じるのかよ?」
俺とお前のガキなら、物凄い淫乱だろうな。
エンゼルの目の前が暗くなる。
「お願い、ぁあっ、スワローには、ふぁっあ、子どもたちには、ひあッぐ、手を出さない、で、ンンっあ!」
「ははははははは腰が上擦って来たぜエンゼル、そろそろ天国が見えてきたんじゃねえか我慢せずイッちまえよ!」
「おねがっ、嫌ッ、フェニクス聞いてッ、ぁあっ、スワローとピジョンの事はほっといてッあッ、あの子たちは関係ないのっ、ふぁッあっ、私ッの事はッ、やぁっ、好きにしていいからっ、スワローとピジョンは」
抽送のペースが上がり、ペニスがゴツゴツ子宮口を突く。
サマードレスを引き裂かれたエンゼルが泣いて懇願する。豊満な乳房と尻を淫らに剥き出し、発情した牝犬のように這い蹲って、愛液にぬかるむ股を何度もペニスに貫かれ、強制的に追い上げられていく。
瞼の裏を過ぎるのは愛しい息子たちの顔。
「ピジョ、スアロっ、ぁあっ、あっあッあ」
あの子たちが巣立った後でよかった。
今ここにいなくて本当によかった。
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッぁあ」
どうか、私のことは忘れて。
忘れたままでいて。
オーガズムを迎えた膣が収縮、子宮口に閊えたペニスを食い締める。股から潮を吹いて痙攣するエンゼルの顎を掴み、狂気に溺れたフェニクスが囁く。
「お前は俺の物だ、エンゼル」
エンゼルと繋がったまま顔を上げると、トレーラーハウスの周りを車が包囲していた。先頭車両の助手席にはディピカが、運転席には偽CEOが乗っている。
ディピカは眼球キャンディをなめながら、偽CEOはうんざりした顔で、それぞれフェニクスを眺めていた。
「ちょうど後継ぎが欲しくなった頃合いだ。ガキは回収させてもらうぜ」
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