向かった先は

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音波の部屋の整理も終わり、俺は1階のリビングにいた音波の母に声をかける。 「お母さん、終わりました。他に何か手伝うことはありますか。」 「ありがとう。あとは大丈夫よ。またいつでも遊びに来てね。音波も喜んでると思うわ。」 「もちろんです。また来ます。」 音波の母に挨拶をして、俺は音波の家を後にした。 家を出て、時計を見ると、時刻は午後5時を過ぎていた。 外はまだ明るかったが、溶けるような暑さは落ち着いていた。 今日は久しぶりに家に行ったな。 部屋も、そのままだった。 でも、音波との日々が思い出せない。 結局、俺は無感情だな。 彼女がいなくなってから、もうすぐ1年が経つというのに。 建物と建物の間から辺りを照らす夕日を見ながら、俺は思った。 家に着いた後、俺は自分の部屋のベッドででゴロンとしていた。 さて、今日もやるか。 俺は起き上がり、机の引き出しから音波のスマホを取り出して、パスワードを打ち始めた。 葬式が終わった後、音波の母が、彼女の携帯を持っていて欲しいと俺に渡したのだ。 俺と一緒に撮った写真やサークルでの写真などが詰まっているので、持っていて欲しいとの事だった。 ただ、パスワードが分からない。 音波との思い出も曖昧な上、彼女が使っていたパスワードなど分かるわけもない。 とりあえず、手当たり次第パスワードを入れてみるが、もちろん開かない。 正直、諦め半分だった。 1日1回コツコツパスワードを入れているが、結局開かないので、携帯会社に頼もうとも思ったが、いつも、今日なら開くかもという思いがあり、今に至る。 今日も、開かなかった。 ふと、壁にかかっているカレンダーを見た。 カレンダーをめくる。 音波の命日、もうすぐか。 来月の命日には赤ペンで丸がしてあった。 彼女がいなくなってから、もう1年。 早いな。 そして、今月の下旬にも赤丸がしてある。 その日は、俺と音波が最後に水族館デートをした日だ。 俺は、手元にある彼女のスマホを見つめる。 思い出が詰まり、ロックのかかった彼女のスマホ。 そして、思い出に出会える、不思議な水族館。 俺は、この2つから何かが分かるかもしれないと思い、水族館に行こうと赤丸をした。 うん。 行こう。 もう一度同じ景色を見に行きたい。 そう思った俺は、水族館へ足を運んだ。
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