それから

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それから

あの後、俺は夜の砂浜で1人、ずっと泣いた。 1時間くらい泣き続けて、水族館に戻った。 グランドピアノの椅子に座り、あの曲をもう一度弾いた。 元の世界に帰れる気がした。 メロディーを奏でていると、いつの間にか、周りには多くの人で溢れていた。 最初にピアノを弾いた時間と同じだった。 でも、確かに俺は音波と出会い、話し、一緒に歩いた。 やっぱり、夢だったのだろうか。 不思議な気持ちだった。 それと同時に、また悲しみが込み上げてきた。 元の世界に戻って来て、そこでまた俺は泣いた。 飼育員さんが驚いてたけど、一生懸命慰めてくれたな。 家に帰るのも一苦労だった。 家に着くまでずっと泣いてた。 彼女との日々が、こんなにも幸せだったなんて。 あの水族館はもう一度、俺に夢を見せてくれた。 そして、いつの間にか忘れてしまった彼女との幸せな日々を、思い出させてくれた。 来年も、また行こう。 そう、俺は思った。 そして俺は今、音波の墓の前にいる。 強い日差しが辺りを照らす。 青い空の向こうには、大きな入道雲が見える。 「もうすぐ夏も、終わりだな。」 俺は、線香をあげ、そっと目を閉じ、手を合わせた。 君と出会えて、本当に良かった。 たったの1年半という短い時間の中で、俺は君から大きすぎるほどの幸せをもらった。 ありがとう、音波。 「どういたしまして。」 ハッと目を開け、辺りを見る。 が、周りには誰もいない。 夏の景色が広がっているだけだ。 お供えした2本のひまわりが、気持ち良さそうに風に吹かれている。 また、会えるといいな。 耳元で、イヤリングがキラッと輝いた。 おわり。
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