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2人の出会い
俺に彼女が出来た。
友人に勧められて入った軽音サークルで、俺達は出会った。
同じバンドメンバーになり、そこから話すようになった。
音波はよくしゃべる。
お互い気が合ったみたいで、2人で初めてのデートをした時に、そのまま告白して付き合うことになった。
そこで俺達は、初めてのキスをした。
俺はこの人を大切にしたいと思った。
出会ってから1年が経つ頃、軽音サークルで新歓ライブがあり、俺達はそれに出演することになった。
ライブ前日、彼女は楽しみで待ちきれないのか、今日はいつもより長電話だ。
「明日のライブ楽しみだね!」
「ああ、そうだな。お前が一番弾けるんだから引っ張っていってくれよ。」
「あーそうやっていつも人任せにするー。全くもう、まあ確かに私が一番弾けるんだけどね。お互い頑張ろ。」
弾けるのは認めるんかい。
しかし、そんな素直なところもまた、彼女の良いところだ。
「ゴホッ、ゴホッ。」
「おいおい大丈夫か?明日は早いんだ。無理しないで、早く寝ろよ。俺も寝るから、お休み。」
「えへへ、じゃあまた明日ね、絶対ライブ成功させようね。お休み、奏音。」
彼女とライブのステージに立てるなんて、俺は贅沢だ。
毎日、こんな日が続けば良いのに。
そう俺は思った。
次の日、ライブ会場にバンドメンバーが集まった。
「今日は俺達は一番最後だ。派手に盛り上げていこう。」
「頑張ろう!」
気合い入ってんな。
頑張るか。
そして、時刻は午後7時。
出番が回ってきた。
軽く音合わせも終わり、あとは幕が上がるのを待つだけだ。
音波が俺の方を振り返り、ニコッと笑って言った。
「ちゃんと私のギターについてくるんだぞ。」
「はは、言ってくれるな。最高のライブにしてやんよ。」
この時、これが音波との最後のライブになるなんて、誰も思わなかった。
幕が上がり、会場が歓声に包まれる。
曲が始まった。
ドラムベースで曲が進んでいく。
そこに俺達のギターが加わり、だんだんと盛り上げていく。
リズムが狂いそうになるが、音波のギターがそれをしっかりと掴んでいる。
音波のギターのテクニックのおかげで、メンバー全体の調子が戻る。
そのままサビを迎えた。
会場がさらに盛り上がる。
鳴り響く音と歓声の中、ステージの最前線でギターを弾いている音波はとても嬉しそうだった。
それを見て、俺も嬉しくなった。
曲が終わると、会場から盛大な拍手が上がった。
「みんな、ありがとう!最高のライブになった!また来てね!」
ライブは大成功で終わり、ステージに幕がかかり始める。
音波のギターがなかったらここまでのライブは出来なかった。
やっぱり凄いな、お前は。
ふと、音波の方を見ると、彼女の顔が青ざめていた。
曲が終わるまで笑顔だったのに、どうしたんだ?
ライブで疲れたのもあるが、何か様子が変だ。
「どうした?大丈夫か?」
と、声をかけようとしたところで、ガシャンと大きな音がした。
音波が倒れた。
会場がざわつく。
「おい大丈夫か!誰か救急車を!早く!」
突然のことで俺は唖然としてしまった。
何をすれば良いか分からず、ただ彼女が救急車に乗せられて行くところを、俺はただ眺めることしか出来なかった。
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