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診察
9時頃、音波の父母が病室にやってきた。
「はいこれ、着替えね。今日の昼に診察があるからそれが終わったら帰れるわよ。良かったわね。」
「うん。また次のライブの練習しなくちゃ行けないからね。また奏音と一緒にライブしたいし。」
音波は俺を見てニコッとした。
こんな可愛い彼女に、一緒にライブをしたいと言われる俺はなんて贅沢なんだろう。
「俺も、音波がいると心強いよ。昨日だってお前のギターがなかったら終わってたよ。助かった。」
「でしょ?てかそんなに頼られたら照れるな。あはは。」
やっぱり可愛い。
この、ちょっと自慢げに話すところとか、笑ってるところとかが、とても癒される。
時計を見た。
おっと。
そういえば今日は午後から授業があるんだった。
とりあえず帰るとするか。
「じゃあ、俺午後から授業があるから1回帰るよ。明日からちゃんと大学来るんだよ。サークルの人たちも待ってるからな。」
席を立ち上がったところで、音波の母が俺に言った。
「あ、奏音君、昨日はありがとうね。娘のことずっと見ててくれて。おかげで安心したわ。」
「いえいえ、僕も心配だったので。」
音波と音波の父母に挨拶をして、俺は家に帰った。
授業が終わり、時刻は午後4時。
授業終わったし、彼女にメッセージ入れとくか。
と、スマホの電源を入れると10件ほど着信が来ていた。
音波の父からだった。
俺は急いでかけ直した。
「もしもし、俺です。何かあったんですか。」
「ああ奏音君、やっと出てくれた。実はな、娘の事で、大事な話があるんだ。病院の入り口にあるカフェに来てくれないか。」
「ええ、分かりました。すぐ行きます。」
嫌な予感がした。
俺は急いで病院入口近くのカフェへと向かった。
店に入ると、右の奥の方で音波の父らしき人がこちらに手を振っていた。
椅子に腰を掛ける。
「すまんな、いきなり呼び出して。」
音波の父は、少し焦っているように見えた。
「いえいえ。それより、何かあったんですか。」
「ああ。ちょっと言い出しづらいんだが、最後まで聞いてほしい。」
父の手が震えていた。
「今日、昼に娘の診察があったろ。その診察でな。」
音波の父が言葉を濁らせる。
そして、父が言った。
俺の嫌な予感は、的中した。
「音波が、白血病だと診断された。」
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