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再入院
1週間が経った。
俺は病院に来ていた。
再入院の後、精密検査なども無事終わり、お見舞いの許可が下りたという音波からの連絡が来たので、授業の後俺はすぐに病院に向かった。
病室には音波がいた。
「やっほー!なんか久しぶりだね。1週間ぶりなのにね。あはは。」
笑顔の彼女を見て、少し安心した。
相変わらず元気な音波だ。
本当に白血病なのか、疑うほどに。
俺は彼女に出来ることを、してあげよう。
俺はいつも通りの俺でいくことにした。
変に気を遣わせたくないから。
彼女に悲しまれたくないから。
「ほぼほぼ毎日一緒にいるからな。まさか寂しかったのか?」
「別に、寂しくないんか。寂しい。」
こんな素直な音波が、たまらなく好きだ。
ぎゅっと抱き締めたくなる。
「またいつでも来るから。おとなしくしてろよ。」
「うん。それでね、私、やっぱり白血病だった。」
言葉が詰まる。
あの後、もう一度診察をして、はっきりと白血病であることが判明した。
いざ、音波の前でそれについて話すとなると、辛い。
音波は窓の外を見つめた。
そして、彼女が言った。
「急性白血病だってさ。」
急性、。
ただでさえ白血病なのに、どうして、どうして急性の方なのか。
「私運良い方なのにね、こういう時に限って急性なんてね、付いてないや。」
短くて、3ヶ月。
多くても、3年の命。
それでも俺は、音波は治ると願った。
「そうだな。」
沈黙が続いた。
「あーあ。早くみんなでライブやりたいなー。」
「うん、お前がいないとバンドが成り立たないしな。」
「もう、頼りすぎだよー、あはは。てか、ギター持って来てよ。練習したい。」
「ははは、ここ病室だぞ。我慢だ我慢。」
「ぶー、けちー。みんなが聞き入ってくれるくらい上手く弾けば、うるさくなくなるよ。」
音波はよっぽどギターが弾きたいみたいだ。
早く退院して弾けるようになるといいな。
「じゃあ、また来るから。欲しいものあったら言えよ。」
「ギター!」
「それ以外だ。」
「もう!」
「じゃあな。また来る。」
「うん。バイバイ。」
病室を後にする俺を見て、寂しそうな目をする音波が見えた。
俺はくるっと反対方向を向いて彼女の方に戻った。
そして音波をぎゅっと、抱き締めた。
「え、ちょ。、、、もう。」
俺の寂しい気持ちは、音波が癒してくれる。
音波の寂しい気持ちは癒してやれただろうか。
「じゃあ、また明日。」
「うん。また明日。」
俺は病院を後にした。
音波は、嬉しそうな顔をしていた。
安心してくれて、良かった。
それに、あんなに元気な彼女だ。
白血病なんかすぐに治して、退院してくれるはず。
そう俺は思った。
音波の闘病生活が始まった。
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