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春。
桜の花が満開で、少し強い風が吹いている並木道。先週までは5月並みの暖かさだったのに、今は少し気温が下がって、夜になるとちょっと冷え込む今日この頃。
美容室の壁が一面透明な窓ガラスになっていて、そんな桜の花が舞う景色が見えて、あたしは外の景色に見惚れてしまっていた。すると、あたしの肩からケープが外されて、
「はい。完成です。鏡、持っててください。どうですか?こんな感じに仕上がりましたが」
と美容師の戸坂さんが微笑んで言いながら少し大きい鏡を持ってきて、あたしは手鏡を受け取った。
「おっ」
あたしはそう言って鏡に映る自分を見つめて、右を向いて、左を向いて、少し斜め上に顔を向けたり、下を向いたり。
「おっ。いい!!イメチェン?いい感じに成功!」
「でしょ?俺も満足!光莉ちゃん、この髪型似合うよ」
「えへへ。戸坂さん、褒めるの上手〜」
「だって、光莉ちゃん。大人になったよね。綺麗になったよ。だから、磨き甲斐がある。フルメイクもしてあげたくなるなぁ」
「やだ、あははっ」
小さい頃から通っているこの美容院は、あたしもお母さんも慣れていて、店員さんみんなと仲良く話せるフレンドリーな美容院だ。
今日あたしの担当をしてくれているのは、戸坂さん。戸坂慎さん。あたしがここに来るようになった頃は新人だった戸坂さんも、今では店長となって、イケメン店長として人気が高い、とか。さすがだ。
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