210人が本棚に入れています
本棚に追加
/717ページ
「やだ。褒めすぎよぉ。戸坂くんも、あの頃は新人のシャンプー係だったのに、今じゃ店長で、しかもあんなにシャイだったのに、こんなにチャラくなっちゃって、ねぇ」
お母さんはそう言って「うふふ」と笑っているけど、あたしと戸坂さんは顔を見合わせて、
「…褒めてないよね?それ」
と言うと、戸坂さんも思い切り苦笑いだ。
「うん。なんか、喜べない」
「えっ?だ、ダメだった?!」
お母さんも、なぜかびっくりしてあたしと戸坂さんを交互に見つめた。
「あ、それより。あたし、これから咲也のバスケの練習試合見に行くから、お母さん、ここでバイバイね」
「え?お茶は?」
「もう時間、ないやっ。戸坂さん、ありがとうございました!この髪型、すっごく気に入ったよ。自慢してくるねっ!!」
あたしはそう言って美容院のドアを開けて外に飛び出すと、駅に向かって駆け出した。ここから駅まで走れば、10分かからない、かな?!
「もう!光莉〜〜!!」
後ろでお母さんが叫んでるけど、ごめんねー!!
雪子は「ふうっ」とため息をついて、光莉の背中を見送りながら微笑んだ。
「大学生になっても、あの調子だもんなぁ」
「でも、大きくなりましたよね。まさか、もう大学生になっちゃうとは。俺も年をとるわけだ」
「やだ。戸坂くん。それを言うなら、私も…」
最初のコメントを投稿しよう!