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「いや、だってさ。俺、子供のシャンプーって、光莉ちゃんが初めてだったんだ。だから、すっごく思い入れがあるんだよね。そのままこのお店で店長させてもらえることになって、有り難い。あの頃から、雪子さんにもご贔屓にしてもらってるし、ね」
戸坂はそう言って、目を細めて微笑んで光莉の背中を見送っていると、雪子も頷いて微笑んだ。
「私も、おばちゃんかなぁ」
「またまたぁ」
「ま、いっか」
「それより、俺の出番、少なかったよね?」
「なんの話し??」
雪子はクスクス笑いながら戸坂に手を振って、
「それじゃ。今日はありがとうございました」
と言うと、戸坂と微笑んで深く会釈をした。
「いつもありがとうございます!!また来てくださいね!」
「はいっ」
雪子はそう言って戸坂に背中を向けて歩き出すと、雪子が歩いている横の車道を黒のミニバンがゆっくりと合わせるようにノロノロ走ってついてきている。戸坂は店に戻りドアを閉めようとしたが、その車に気がついてフフッと鼻で笑って、ゆっくりとドアを閉めた。
《来ると思った。》
運転席に座っているのは、雪子の旦那である理だった。
雪子はチラッと横目で車の運転席を見てみる。運転席は車道側だから、顔は見えない。でも、誰?なんて聞かなくてもわかる。
やがて車が止まると、雪子は助手席のドアを開けて、
「ストーカー。何してるの?こんなとこで」
と言うと、運転席に座ってタバコを吸っている理がニヤッと微笑んで雪子を見つめた。
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