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はなちゃんは、初めは俺に告ってきてたのに、俺は佑里果のことを好きになって、当時は双子の拳ちゃんと付き合っていたのに、俺は拳ちゃんから奪ってしまった。なのに、佑里果と付き合ってから、聖香のことを好きだと気づいて、別れ話をして苦しませたよね。それからも、何かあるたび、そばにいてくれた。その優しさ、忘れないよ。
色々あったけど、楽しかった。
聖香のことで少し落ち込んでた時期もあったけど、みんなはいつも通りだった。それがすごく嬉しかった。だから、俺はまた自然と笑えるようになったんだ。
それでも、心のどこかで、まだ待っている。
二度と口にはしないけど、俺は……。
*
翌朝。
俺は独身寮に入っているから、これから忙しくなるし、しばらく実家には帰ることができない。
自分の部屋で、姿見の前に立ち、母さんがくれた新しいネクタイを締める。紺色にグレーの斜めのラインが入っているネクタイの柄は、結構イケてる。黒い鞄を持って部屋を出ると、階段を降りてリビングに入った。ソファにカバンを置いて、ダイニングの席につくと、階段を降りてくる足音が聞こえて、ペタペタと裸足でリビングにやって来たのは、親父だ。
「おぉ。明日からいよいよ、初勤務か。大地」
「おう」
俺は親父を見上げて、無表情のまま答えてみる。親父はトレーナーにジャージ姿。やる気なさそうなオッサンだ。年齢的には既に《じいさん》だけど、まだまだ見た目は若いとは思う。
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