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「母さん。…サンキュー」
俺はそう言って微笑むと、そこに二階からゆっくりと姉貴が降りてきて、リクルートスーツを着ていた。
「あ、良かった。間に合った。大地。もう行くの?」
「アネキ。うん。もう行くけど、家のこと、親父と母さんのこと、よろしく頼むよ。なんかあったらLINEして」
俺が言うと、姉貴はニコッと微笑んで頷いた。
「うん。あ、あんたも体に気をつけて。無茶して、怪我とかしないでよ」
「分かってるよ。アネキ、早く仕事、決まるといいな」
「うん。決めてみせる!絶対働きたいってとこ、決めてるんだから」
姉貴はそう言って、ガッツポーズを見せると、親父と母さんは姉貴を見て微笑んでいる。
「今のご時世、なかなか就職も難しいもんな。頑張れ!」
「光莉なら、なんでも出来そう。あ、咲也くんは仕事決まったの?」
母さんが言うと、姉貴の眉がピクンと動いた。
「朝からあんな奴の話し、しないで!」
「また喧嘩したのかよ」
「知らない!あんなチャラ男。もう別れる!」
俺と姉貴が話していると、母さんが壁時計を見て、
「時間、大丈夫?」
と言うと、俺と姉貴は「あっ」と顔を見合わせて、
「じゃ。行ってくる。暫く帰れないけど、心配しないで。親父も母さんも、もう若くないんだから、体に気をつけてよ」
と言って母さんはニコッと微笑んだ。
「若くないのは、一人だけだヨォ」
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