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刑事じゃなくても、何をしたいと言っても、きっと両親は背中を押してくれるんだ。
いつまで経っても仲の良い夫婦の姿を見て、俺は心底憧れる。
俺には今も彼女はいないけど、いつかあんなふうに愛し合えたらいいな、と思う。いつか、どこかで必ず出会える。いつか、思いが届く日が、来る。
きっと…!
俺はそう思って我が家を眺めて、駅へと道を進もうとした時、
「大地!」
と母さんの声が聞こえて振り向いた。母さんは玄関から出てきて、大きく手を振っている。
「あなたの帰る場所が、ここにあるってこと、忘れないで!」
すると親父も出てきて、母さんの肩を抱いて俺を見つめると、
「大地。お前は自分の前に広がる道を真っ直ぐ行け!」
と叫んで、ニヤリといつもの笑顔を見せた。
ほんと、憧れるよ。いきなり、泣きたくなるようなこと言うんだから。
俺は微笑んで、二人に大きく手を振った。
「行ってきます!!」
そう。
ほら。よく言うだろ?未来は無限大だ、と。
俺は、その言葉が好きだ。だから、どんな未来でも受け入れよう。死ぬほど辛いことも苦しいことも、きっとこれから沢山あるはずだ。でも、絶対に諦めない。
歩きながら、俺は腕時計を見てフッと微笑んだ。
父親の壁は、遥か高くそびえ立っている。
いつか、追いつきたい。
あの背中に…。
そして、もう一人。
最愛のあの人に、いつか会えるその日まで……。
完
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