あなたは覚えていますか?

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あなたは覚えていますか? その日も、どこへ連れられるのかわからないまま、 私はあなたについて行った。 春だというのに、まだ肌寒く、 静かに雨が降っていた。 どこへ行くのだろう? あなたは無言のまま歩く。 いつものことだ。 私も黙って、あなたと並んで歩く。 いつの間にか、公園に来ていた。 初めて見る場所だ。 こんな雨の日に、どうして公園に? ブランコや滑り台のある広場を抜けて 小さな小路を進むと、 突然、あなたは足を止めた。 あなたが私の手を取って導いた先には、 見事な藤棚があった。 「わ〜。きれい!こんなに長い藤のトンネル、初めて見た!」 高揚する私の横顔を、 あなたは満足そうに見つめていた。 「君に見せたくて」 その一言が嬉しい。 あなたが私のためにしてくれること、 ただそれが嬉しい。 「ありがとう」 ふと、懐かしくなって来てしまった。 あの頃と変わらず、紫色のトンネルを歩く。 「ここが、最後に来た場所だったね」 あなたは覚えていますか? あなたとの思い出の場所。 あなたも見ているだろうか? 空の上から、この紫色を。 - - - - - - - - - - - - - フリー台本。朗読用。改変不可。 使用の際は、事後で良いので報告いただけると嬉しいです。拡散させていただきます。 生配信で使用の際は作者名も読み上げていただけると嬉しいです。 生配信のアーカイブや、投稿型配信(YouTube、Spoon、など)にはタグに #作者ふわり を入れていただけると幸いです。 作者ふわり Twitter@fuwari3333
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