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言葉は少ないが、ゆったりとした豊かな雰囲気のなかで夕食は終わった。母さんが食器を片付けようとすると、手伝おうとばかりマリア先生が立ち上がったが、すぐに手で制せられた。僕の方は母さんについて、銀色の大きいトレイに食後のお皿やスプーン、フォーク、ナイフなどを乗せていく。そのようすをマリア先生は微笑みながら見ている。
父さんはどこか落ち着かなそうに、脇の方を見ている。
そのあと、最後のデザートが来た。ブルーベリーの小さなパイだった。ブルーベリーももちろん自家製。こんがりと穀物のやけた匂いに、甘酸っぱさが重なる。
新しく淹れられた紅茶を一口飲み、先生は――小さなフォークが添えられていたというのに――そのまま手に持って口に運び、白い歯を見せてかじった。そして、目を細めた。
僕はとにかく、愛想のない父や母の対応にひやひやして始まったディナーが、やわらかいライトとろうそくの火に照らされて、穏やかに終わることにほっとしていた。
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