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僕は小学校から帰宅すると、古いがそれなりに趣きのある家の建物を見上げているマリア先生の後ろ姿を発見した。僕が最初にマリア先生を見つけたんだ、と思うと少し得意になった。
もともとは駅まで迎えに行った方がいいのではないかと僕は両親に提案したのだが、母の「こーんな田舎町、何も変わってないんだから、一人で駅から来られるでしょ、子どもじゃないんだし」との突き放した言い方に怖気づいてそれ以上言えなかった。
本当は僕が言いたかったのは、もっと歓迎してあげようよ、という意味だったんだけど。
僕は先生の薄茶色のふわりとした長い髪が傾き始めた陽の光を受けて光っていることに気づき、どきどきした。こんなつややかな髪をした女の人は、この町では滅多に見かけない。
僕が見惚れていると、マリア先生は視線を感じたのかおもむろに振り返った。
大きな目。大きすぎてまるでビー玉のよう。でも色は髪の色と同じ薄茶色だ。
麦わら帽子の下にもくっきりと見てとれた。
やや低めの鼻と尖らせたような血色のよい唇。
服装は少し古風な感じのするワンピース。いや、後から知ったのだが、都会では今はやっている型の洋服だったらしい。
「君は、……オリバー?」
マリア先生は回想するように眉を寄せてから僕の名を呼んだ。
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