歓迎されざる客

3/5
前へ
/10ページ
次へ
 先ほどのパティオが眺められる、ソファとテーブルを用意した一角にマリア先生を案内した。 「あら、室内から見ても素敵ね」  先生の誉め言葉に、つい頬が緩む。 「でしょ? うちの自慢なんだ。母さんも言ってた。いかにも田舎宿ってイメージだけは持たせたくない、って」 「お母さまらしいわね」  僕は先生の言葉を聞きとがめた。 「マリア先生は、僕のお母さんのこと、よく知っているの」  聞きたくなったのは、母からはマリア先生の話はあまり出ないからだった。 「『先生』はやめて。マリアでいいのよ」  先生、いやマリアはくすぐったそうに言う。 「君のお母さまにはお世話になったのよ。お花の育て方は今でもよく覚えているわ」 「そうなんだ」  意外な言葉に僕は期待感をふくらませた。マリアは、ティーカップのミントティーを静かな息を吹きかけてさましている。そういうしぐさも、田舎育ちの僕にはまぶしく見えた。いい香りが辺りに満ちるようだった。まるで先生がその香りを発しているかのような。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加