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マリア先生
マリア先生は小さな合成皮革の四角い鞄にすべてを詰め込んで僕の家にやってきた。
僕はもうすぐ中学生の一人っ子。両親は宿屋を営んでいて、他に家族はいない。
忙しいときにはお手伝いを雇うことはあるけど、大体は家族で切り盛りできるような小さな宿屋だ。
それはそうだろう。
自然豊かなこと以外は何の見どころも、とりえもないど田舎の町なんだから。
マリア先生は――事前に聞かされていたことだと――25歳とのことだった。
小さい頃にこの町に家族と住んでいたが、すぐに両親と一緒に街へ出て、そこで大学まで進んだ。「女だてらに生意気」な人らしい。
そんな彼女が僕の宿屋に来るようになったわけは、彼女が病気になり、なじみがないでもない生まれ故郷で少し療養生活を送るためだったという。
ちなみに「先生」がつくのは、上のような理由によって、うちの両親が半ば皮肉でそう呼んでいるからであって、学校の先生とかであるわけではなさそうだ。
どうも、マリア先生の到着はわが家に一波乱を起こしそうな予感を僕のうちにも抱かせるものだったのだ。
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