1人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
➀
「“名は体を表す”って言うじゃない?」
「おや? 司さんらしくないですね。導入で慣用句ですか?」
「『らしくない』が引っかかりますが、この度はひとまず引っかけたまま置いといて、進めたいと思います」
「へぇ、『引っかけたまま置いとく』なんてこと、司さんにもできるんですね。知りませんでした」
「その台詞にも引っかかりますが、ぐ……流したいと思います」
「ほぅ、『引っかかっているのに流す』なんてこともできるんだ。いやあ、知らなかったなぁ」
「むぐぅ、ぐ、(はあはあ)く、くくゥ(ふうふう、ぜいぜい)むむむぅ――」
「あ、息が荒くなってきましたね。私、余計なことを言って司さんを苦しめてしまったようです。……大丈夫ですか?」
「――ふう、ふう、ひぃ……ひっ、ひっ、ふー。ひっ、ひっ、ふぅー――」
「ん? それは、もしかしてラマーズ法?……まさか司さん、おめでたですか?」
「ちがうわよぅ!」
「だとしたら何のために? 別の意味で大丈夫だろうかと心配になりますね」
「出産時に行うラマーズ呼吸法って大事なのよ! 前もって練習すると良いんですって。知ってた? 左くん」
「知っていますけど、その練習は司さんがご結婚をされて、赤ちゃんを授かってからでいいのでは? あーあと、聞いた話だとラマーズだけが有効な呼吸法ではないみたいですよ」
「え? そーなの?」
最初のコメントを投稿しよう!