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「“名は体を表す”って言うじゃない?」 「おや? 司さんらしくないですね。導入で慣用句ですか?」 「『らしくない』が引っかかりますが、この度はひとまず引っかけたまま置いといて、進めたいと思います」 「へぇ、『引っかけたまま置いとく』なんてこと、司さんにもできるんですね。知りませんでした」 「その台詞にも引っかかりますが、ぐ……流したいと思います」 「ほぅ、『引っかかっているのに流す』なんてこともできるんだ。いやあ、知らなかったなぁ」 「むぐぅ、ぐ、(はあはあ)く、くくゥ(ふうふう、ぜいぜい)むむむぅ――」 「あ、息が荒くなってきましたね。私、余計なことを言って司さんを苦しめてしまったようです。……大丈夫ですか?」 「――ふう、ふう、ひぃ……ひっ、ひっ、ふー。ひっ、ひっ、ふぅー――」 「ん? それは、もしかしてラマーズ法?……まさか司さん、おめでたですか?」 「ちがうわよぅ!」 「だとしたら何のために? 別の意味で大丈夫だろうかと心配になりますね」 「出産時に行うラマーズ呼吸法って大事なのよ! 前もって練習すると良いんですって。知ってた? 左くん」 「知っていますけど、その練習は司さんがご結婚をされて、赤ちゃんを授かってからでいいのでは? あーあと、聞いた話だとラマーズだけが有効な呼吸法ではないみたいですよ」 「え? そーなの?」
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