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「なんかね、ソフロロジー法ってのも有効だそうです」 「なにそれ?」 「陣痛の痛みをやわらげるために、ゆっくりと長く、深く息を吐くことに集中する呼吸法だそうです。お産の進み具合に合わせた呼吸法により、赤ちゃんがスムーズに出てきやすくなるんですって。妊娠中のイメージトレーニングも重視されるそうです」 「すっご~い! 感激い! 左くん、勉強してるのね、わたしと赤ちゃんのために♡」 「え? いやいや、決してそういうわけではありません」 「愛されてるって感じるわぁ♡」 「違うってのに!」 「もう、テレちゃって。くすっ」 「(強行スルー)『名は体を表す』がどうしたんですって?」 「左くんは、その意味、知ってる? もちろんご存じですよね。言いたいでしょうから言わせてあげます。ハイ、どうぞ!」 「……名前はその物や人の性質や実体をよく表すものだ、ということです」 「まあ、よくできましたぁ(パチパチパチパチ)」 「おちょくっているのですか? おちょくっているのでしょうねぇ……」 「名前で頭に浮かぶビジュアルってあると思うの。左くんはどう思いますか?」 「うーん、そうかもしれないですね。例えば“白鳥麗子(しらとりれいこ)”なんていう名前だと、裕福な家庭で育った美女をイメージしてしまう、とか、そういうことですか?」 「まさにそういうことですよ。他にも例を挙げますと、“権田原大吾郎(ごんだわらだいごろう)”とかっていう名前だと、シュッとしたイケメンは想像できません」 「……なるほど。そうかもしれませんね……で? そのことを踏まえて何をおっしゃりたいわけですか?」 「“森のくまさん”です」 「ん?」
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