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「司さん、そこは『心配』というよりも好奇心ではないですかね? 怖いもの見たさとでも言いましょうか、そんな心理が働いて、ゆっくりと近づくのでしょう」 「『怖いもの見たさ』かぁ……わたしにはないわぁ。左くんにはあります? 怖いのに見たくなる、なんてこと」 「うーん……じっくりと考えたことはないのですが、頻繁に司さんと会ってしまうのは、まさにそれと似た心理が働いている結果なのかもしれませんね」 「むッ、なにそれなにそれ! わたしのどこが怖いのよ!」 「あー、怖くはないか……じゃあ、一体どうして私は司さんに会ってしまうのでしょうね?」 「うふ♡ 左くん、それを“恋”ってい――」 「あ! そうか! わかったぞ!」 「わたしの台詞を遮るように叫びましたね?」 「ああ、ほら、あれです。脱いだ靴下に、つい鼻を近づけて(にお)いを確認してしまうことってあるじゃないですか。(くさ)いとわかっているのに、なぜかそうしてしまう……それに似ていますね」 「な、なにぃぃ!!」 「あれ? 怒っちゃいました?」 「怒るわ! わたしゃ蒸れた靴下かい!!」
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