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「ごめんなさい」 「ぐぬッ」 「はい、これでよし、と。  ご存じない読者の皆さんのためにお伝えしておきますと、司さんは謝ればすぐに許してくださいます。そういうポリシーの持ち主なのです。ね、司さん、そうでしたよね?」 「ぐ……ぐむむむむ……」 「さ、ほら、サッと許して話を進めましょうよ」 「ぐ……わ、わかりました」 「さすがですね。えーと、どこまで来ていましたか? 歌詞の解析とやらは」 「お嬢さんが、自分を呼び止めて絶命した熊五郎に近づくシーンです」 「まだ生きておられますよ。血管が切れていますので危ない状態だとは思われますけどね」 「あ、そうでしたね。この後、イヤリングをお嬢さんに渡さないといけませんものね。では、お嬢さんの気配に気づいて、熊五郎は首を持ち上げて握りしめていたこぶしを差し出すのでしょう」 「司さん、最初の方でおっしゃっていた『危険な人格の発動』はどうなったのですか?」 「過激な運動で発動は抑えられたのだ、と解釈してみるのも良いかもしれませんね?」 「なるほど。そういうことにしておきますか……」 「お嬢さんが唇を奪われる危険はなくなりました。良かったですね」 「で、熊五郎さんが差し出したこぶしを開くと、イヤリングが表れるのですね?」 「そういうことです。そこで、お嬢さんは気づくのですよ」 「熊五郎さんの優しさにですね?」
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