淫らに一途

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いやお前、同じ会社におったんかい。 4月。 わたくし、中野(なかの) (ゆい)(26)はめでたく主任に昇進しました。役職付きになったわけだし、気を引き締めて頑張らないと、なんて月次(つきなみ)なことを一応考えてたら、 「福岡から赴任しました、藤永(ふじなが)です。入社3年目です。宜しくお願いします。」 小学校中学校と、学校が一緒だったタメの男が後輩として部署異動してきたので、早くも「気を引き締める」ということが不可能になりました。 いやお前、なんでここおんねん。 **** 「ねえ、藤永さんかっこよくない?」 「わかります!なんか雰囲気暗めですけど、顔はよく見たらわりと整ってるし、ていうか背がやばいです、高すぎません!?」 「やっぱ背ぇ高いとスーツ似合うよね〜。」 「ね、中野さんもそう思いません??」 ひぎぃ。 後輩女子社員が藤永、いやもう社会人だし「さん」付けすべきか、とにかく藤永さんをさっそく品定めしてて、私はタンブラーを掴んだまま苦笑いする。 「あー……んー、まだ顔良く見てないなぁー…」 ヤツとは、 小学校中学校と何回か同じクラスになった。 クラスが一緒のときはかなり絡んでた。売り言葉に買い言葉みたいな、今思うと「うわ、中学の男女〜(笑)」って薄ら笑いしてしまうような、そーゆー会話。でもそれが楽しい。 なんていうか、…まぁ、言ってしまえば私の中ではクラスが一緒になるたびに「コイツ、気になるかも。」と思う相手ではあったんだけど、特段そこから進展は無かった。 そんなこんなで高校は別のとこに行って、風のウワサで藤永が留年したって聞いた。いや、高校留年って何したらそんなことになるの。あいつ県外の超進学校に行ったのに。留年を気にしてか、中学校の同窓会とかも藤永は来なくなって、そんな人とはまぁ疎遠になりますよね。 クラスが変われば自然と消えるような浅く薄っぺらい好意だったわけだし、今の私の中では完全に『過去の人』だった。 それなのにその男が突然同じ部署に現れたら普通に気まずいんだって。 パソコンのデスクトップ越しに、藤永を観察してみる。 背ぇたっか。 なにあれ絶対180あるじゃん。小学校の頃から高い方だったけど、大人になってからも高い方に分類される身長じゃん。 顔立ちは、中学校のときよりちょっと辛気臭くなった?でも久しぶり見ると、あー藤永だーって感じ、 って、 藤永と目があった。
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