貫通

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扉の前には、ビニール袋が落ちていた。 口が縛られていて、何かが入っているようだが、中は見えない。 そして、袋の向こう側に目を向ける。 ズリ……ズリ…… ボサボサの白髪で痩せぎすの、白いボロボロのワンピースを着た老婆が、骨ばった足を引きずって隣の部屋に向かって歩いていた。両手に2つビニール袋を持っている。 背は異常に小さく縮み、手足は棒のように細い。 もう少し様子を見ようと扉を少し開けた時、扉の前に置いてあったビニール袋に当たり、ガサッと音が鳴ってしまった。 その時、今までの動作とは比べ物にならない速さで老婆が振り向いた。 目はランランと光り、こちらを確実に見つめていた。 ダダダダダダッ 凄まじい速さで俺の部屋に向かってくる。 バタン!! 俺は急いで扉を閉めた、少ししか扉を開いていなかったのが幸運で、老婆が来る前に扉を閉めることが出来た。 ガサガサ…ガサッ 扉の前でビニール袋の音がする。 必死に扉を開けられないようにドアノブを抑えていたが、扉を開けようとしてくる素振りはない。 その後、無音がどれくらい続いただろうか。 緊張するのにも疲れるくらいの時間が経ち、 老婆はただ単に袋を回収して言っただけではないか?という疑念が湧いてきた。 ただ、あのランランとした目が忘れられず、また扉を開けるのを躊躇った俺は、覗き穴から様子を見てみることにした。 何も見えない。 しっとりとした漆黒が覗き穴の向こうにあった。 何も見えない?と戸惑って少し目を穴から離すと 漆黒の左端から血管が走った白い色がギョロッと現れた。 全てを理解したその瞬間、全ての毛穴から汗が吹き出し、扉の覗き穴を咄嗟に手で押さえた。 ハァッ ハァッ 息が乱れる。 あれは、あの老婆の目が…… 次の瞬間、 ダンッ と大きな音がした。 覗き穴に置いていた手の甲から、包丁の切っ先が飛び出て、血がそこにこびり付いていた。 ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ 叫びながら手を包丁から抜く。 扉の覗き穴から、包丁が貫通して血を滲ませていた。 強烈な痛みと共に俺の意識は途絶えた。
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